「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第2回 『一億本の向日葵』 ~この命も誰かが生きたかった命~

第2回 『一億本の向日葵』

~この命も誰かが生きたかった命~

 

樋野先生の「朝日がん大賞」受賞、どあらっこの「日本対がん協会賞 団体」受賞とここ最近とても喜ばしいことが続いている。この賞を授与している日本対がん協会の取り組みの一つに「リレー・フォー・ライフ・ジャパン」というがん征圧の24時間チャリティーイベントがある。世界、そして日本の様々な地域で行われており、私も信州まつもとの実行委員としてこの活動に関わらせて頂いている。多くの方々のご支援やご協力を頂きながら、今年も9月8日㈯・9日㈰に開催した。ご参加下さった方々と共に過ごした命の時間は多くの感動を与えてくれました。

当日の会場で行ったカフェ。そこでの命と本気で向き合っている方々との語り合いは私の中に大きな種を残してくれた。

 

「『この命も誰かが生きたかった命』。治療がつらく心が押しつぶされそうになった時に、呪文のように唱えていた。」血液のがんで共に闘った4人の女性がカフェに立ち寄った際に語られたこの言葉。最初は、その人自身がご自分を叱咤激励しているようで、少し責める言葉のようにも感じた。でもなぜかその言葉は私の頭から離れることなく、心地よく繰り返されていた。

 

『この命も誰かが生きたかった命』

 

『この命も誰かが生きたかった命』

 

今ではこの言葉を思い出す度に、体温のような温かささえ感じる。がんという病と共に生きる私の、そして出会った仲間の命が、本当に尊くかけがえのないものであると体感を持って教えてくれた言葉であった。

 

どんなにいい言葉であっても受け取れない時がある。言葉は変化しないけれど、自分が変化し、その言葉を一番いい形で受け取れる時がくる。短時間ではあったけれど、変化しうる自分という希望の種も一緒に受け取ることができたことは、実行委員として取り組んだ自分へのご褒美になりました♪

ひまわり担当 斉藤智恵美