「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

~あうんの家 『森が教えてくれたこと』~

~あうんの家 『森が教えてくれたこと』~

9月22日㈯、軽井沢の「あうんの家~まなびばの時間~」にてネイチャーガイドとしてご活躍されている池田雅子さんによる『森が伝えてくれたこと』のお話会が開催された。

慢性疲労症候群という病に悩まされていたという池田雅子さん。

以下は池田雅子さんのお話より

疲労感に襲われ熟睡することも出来ず、朝、夫や子供たちを送り出すことも出来ませんでした。ある日フィッシュイングが好きだった夫に誘われて子供たちと森にやってきました。彼女は待っている間に森に包まれている感覚を感じ、そこで熟睡することができました。何年か振りの感覚でした。その感覚を文章にし、やがて色をつけて絵にしてみました。その後、芸術療法を経て、森林生態学を学ぶことにより、本来の自分、森のなるべき姿を知りました。各々の木にもそれぞれ個が存在し各自のDNAを継続して存続することに力を注ぐ。植物という動かないものの中に個というものを感じさせる、その事に驚きを感じました。また各自、極力自家受粉させない為の試みを行っているという工夫、生命の持つ素晴らしさを感じられました。」

 

あうんの家で池田さんのお話を聞いた石塚眞一さんは「私も自然の中を歩くのが好きなので、早朝誰もいない時間、森の中、草原の中を一人で歩くのが好きです。というか自分の心の中を鑑みるのです。すると山の声とが聴こえてきます。風の音、鳥のさえずりとともに声なき声が語りかけます。池田さんも山の神を感じたと、いうように自然界には大いなるものを感じられます。」と話す。

がんと生きる中で、静寂の中に身を置き自分と向き合うことも時に必要であり、自然はそれをいつでも温かく見守ってくれる頼もしい存在なのだと思う。

 

現在、池田雅子さんは木島平村のカヤノ平に極力生態系が守られているブナ林で案内人をしている。彼女は「人間は自然界に良かれと思って、他所の土地から他の植物、などを持ってきます。その事により知らないうちに生態系を破壊するということをやってしまいます。また今現在、温暖化などの環境の変化により、森林が絶えることが出来ない(土砂崩れなど)ほどの異常気象が起きています。それを防ぐ意味でも私たちも二酸化炭素排出量を増やさないよう一人一人が努力していく必要もあります。」とも語ります。

彼女は森の自然と出会えたことを心から感謝し、その森を守りたいと本気で考えています。

私たちは一方向的に自然から豊かさを受け取り続けている。食べ物や水、酸素だけに留まらず、「自分を癒す力」まで。自然の懐の深さに感動する。あらゆる物や人を受け入れる『空っぽの器』でありながら、そこには豊かさが満ちている。