第11回『一億本の向日葵』
~ダイアローグ&笑子さん~
「Dialogue(ダイアローグ)」
この「対話」という意味の単語の響きが、何となく好きである。
「ダイアローグ」。この言葉を好きになるきっかけは、2年前に体験した『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』である。――――完全に光を遮断した空間の中へ、グループを組んで入り、暗闇のエキスパートである視覚障害者のアテンドにより、中を探検し、様々なシーンを体験する暗闇のソーシャルエンターテイメント――――1人で参加した私は、他の参加者の方と7名でグループを組み、秋の風景に彩られた暗闇の空間を体験した。夜の暗さとは比べものにならない程の暗闇。初対面の方々とグループを組んだわけだが、これほど誰かの「声」「助言」「体温」「気配」を求め、信頼し、完全に頼る経験は今までなかった。その時に誰よりも落ち着いて堂々と歩みを進めていたのは、小学3年生の男の子であった。大人たちは彼を頼りに恐々足を一歩また一歩と出していた。年齢や性別、職業、立場、その垣根を軽々と乗り越えて、対話し、助け合いながら、未知の世界を進んでいく。そんな体験であった。
年齢や性別、職業、立場、その垣根を軽々と乗り越えて、対話し、助け合いながら、未知の世界を進んでいく。
お互いの存在を尊び、対等な対話を重ね、共に学び、それぞれの道を歩んでいく。
「がん哲学」の中にはこの「ダイアローグ」がある。
それが大きな役割ではないかと思う。
がんと共に生きることは、ある意味で先が予測できない暗闇のように感じられる時もある。その暗闇の中には、見えないけれど道がいくつも用意されているのではないか。そしてそんな暗闇にも「~にもかかわらず宴会」のような楽しみもある。実は『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』の中にもカフェがあり、ジュースやコーヒー、生ビールなども楽しめた。その味は格別で、とてもいい思い出となっている。
『笑子さん』
最近対話をした93歳の笑子さんは、歩幅の狭い足取りと丸くなった背中―――と身体の状態は年相応であるが、無邪気に笑い、ちょっとお下品な(笑)?冗談を飛ばすその姿は、まるでちょうちょのような可愛らしさで、私の目標とする人生の先輩である。笑子さんはいつも「私の馬鹿話に付き合わせてごめんね。」と仰るが、「笑子」さんの名前そのままに今を生きている姿にいつも感動を頂いている。たまに起こる心臓の痛みを「胸のトキメキ」と表現される笑子さんは、ユーモア学の師匠でもある。
ひまわり担当🌻斉藤智恵美