「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第13回『一億本の向日葵』 ~学ぶこと 心が揺さぶられること~

第13回『一億本の向日葵』

~学ぶこと 心が揺さぶられること~

長野県塩尻市で行われた長野県教育委員会主催の「がん教育研修会」に参加する機会を頂いた。小学校・中学校・高校で、がん教育に関わっていらっしゃる先生方と共に「がん教育」について学んだ。パイロット校の実践報告、日本女子体育大学 教授 助友 裕子先生、NPO法人がんサポートかごしま 理事長 三好 綾氏のご講義、演習やグループワークと盛り沢山な内容であり、その中からたくさんの事を考え、感じさせて頂いた。「がん教育」は「健康教育」の一環ではあるが、「命を考える」という大きな可能性を含んでいる。実践報告の中で流れた先生の温かい涙、「人間誰しも死を迎えることを考えると、年老いることや病気になることを忌み嫌うのではなく、受け入れることも健康教育に含まれるのではないか」という疑問にたどり着いたというお話、体験から語られる「いのちの授業」を受けた子どもの素直な「私を助けてください。」の感想文。どれも心が動かされたからこそ出てきたのだろうと思う。

 

「わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ」(ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』)

 

がんになる前に『夜と霧』を読んだ時、この一文を何度声に出して読み返しても意味が理解できなかった。しかし、がんと共に生きることになり、樋野先生の著書『人生から期待される生き方』で再びこの一文に出会った時に、スッと胸に落ちた。自分が困難と本気で向き合う時、誰かが困難と本気で向き合う姿を目にする時、大きく心が揺さぶられる。きっと、それは小学生でも、中学生でも、高校生でも、大人でも同じである。そして、その時こそ知識だけでは得られない大きな学びを得るのだと思う。がんと共に生きることは、自分ではコントロールできないものとの共存だけれども、人生がそこに何かを期待してくれているのであれば、応え続けたい。そして、子どもたちと共にそのような学びを発見できるような機会をつくりたいと夢を膨らませた。

ひまわり担当🌻斉藤