「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第14回『一億本の向日葵』 ~ヤドリギから学ぶ~

第14回『一億本の向日葵』

ヤドリギから学ぶ~

ヤドリギ

 

「松本がん哲学みずたまカフェ」を開催する際に、よくお借りしている「あがたの森文化会館」は、ヒマラヤ杉に囲まれた「あがたの森公園」内にある重要文化財「旧松本高等学校」校舎を保存しながら、市民の教育文化活動に活用している施設である。とても趣のある建物で、「がん哲学カフェ」を行うのには、ぴったりだと感じている。いつもお借りする2階の部屋の窓は昔ながらの木製の大きな窓で、そこからは公園内の木々を眺めることが出来る。この季節になると、木々の葉っぱは落ち、少しもの寂し気な雰囲気になるが、ところどころに『ヤドリギ』を見つけることができる。大きな木に半寄生しながら生長し、木々全体が弱々しく見えるこの時季に独特の存在感を放ち、青々と球を描くその姿に、子どもの頃は何だか怖さを感じていたが、大人になり改めて意識をしたヤドリギは別の視点を与えてくれた。昨年の冬に、一人の参加者の方が落ちていたヤドリギの枝を持ってきてくれたことから、松本がん哲学カフェでも話題に上がり、話はヤドリギの寄生からカッコウの托卵にまで及んだ。「人間の社会は、ヤドリギの寄生やカッコウの托卵のような行為に対してあまり寛容ではない。」「もしその生態的宿命を背負ったヤドリギカッコウに正論をぶつけてしまったら、きっと生きるすべを失ってしまう。」「自然界ではその特徴がそうあるものとして、ありのまま受け入れられている。善悪を判断しているのは、人間だけ。」そんな風に話が進んだ。“寄生される側の負担”“托卵時に自分の生んだ卵を落とされ、別の卵を託される側の苦しみや悲しみ”ばかりに気をとられていた私にとって、自分の持つ“正しさ”に疑問を持つきっかけとなった。樋野先生が伝え続けて下さっている「正論より配慮」。自分の価値観を一度傍らに置き、俯瞰的な目で見ることが、配慮への第一歩だと改めて感じた。今後も「正論より配慮」への視野を広げ、学んでいきたい。

 

ちなみに・・・

ヤドリギは12月24日の誕生花。花言葉は、氷雪の中でも緑を保つという特徴から「忍耐」「困難に打ち克つ」「克服」、ロマンチックなものだと「キスして」もあるとのこと。

実は素敵なヤドリギ。今度木の下を通るときには、何だか温かなものを受け取れそうです。

ひまわり担当🌻斉藤智恵美