「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第30回『一億本の向日葵』 ~本当の言葉を学ぶ~           

第30回『一億本の向日葵』

~本当の言葉を学ぶ~      

    3月30日(土)に、20回目となる「松本がん哲学みずたまカフェ」を開催致しました。歴史ある木造校舎を活用したあがたの森文化会館の1-1教室、木枠の窓から見える強い風と春の景色。あと一週間ほどで、あがたの森公園も桜が咲き始める気配がしています。この心地よい雰囲気に背中を押されながら開催した今回のカフェには、17名の方がご参加してくださいました。初めて参加された方も数名いらっしゃいましたが、皆さんが“言葉”“対話”をとても大事にしながら、お話して下さることにとても感動致しました。

樋野先生は「種を蒔く人になりなさい」(いのちのことば社)の中で、“会話と対話の違い”ついて、「会話はお互いが話すこと、対話はお互いに考えること」と書かれています。今回のカフェでとても印象的だったのが、参加者の皆さんの話すスピードです。自分の気持ちを確かめるように一語一語絞り出してお話して下さり、その言葉たちが織り成すものは、その言葉の意味を超えているようでした。真剣に出された言葉には、人は真剣に耳を傾けるものなのだと知りました。漢字練習で幾度も書いたことのある言葉であっても、その言葉を本当に学べるのはかなり後々になってから・・・。私は、がん哲学外来のカフェの場で、どれだけの言葉を学びなおしたのか、と思いを馳せました。会話と対話のように、世の中には、“似て非なる言葉”がきっとたくさんあるのだろうと思います。芸術家の岡本太郎氏が、「人の痛みに敏感であったら、自分だけが“幸せだ”なんてことはありえない。だから、瞬間的に溢れだす“歓喜”を大切にするんだ」という内容を本に書かれているのを読み、ハッとさせられたのを覚えています。悲しみや痛みを抱えて生きるその中にある“歓喜”は、桜の蕾が膨らみ、花ひらく瞬間かもしれませんし、子どもがピンク色の野花の蜜を「甘いんだよ!」と無邪気に吸ったり、転んで泥だらけになる瞬間かもしれません。家族がご飯を食べる後ろ姿やくだらないギャグに、クスッと笑った姿かもしれません(笑)。悲しみや痛みを抱えていて、幸せが遠く感じていても、“歓喜”はいつでもすぐそばにある。言葉が教えてくれることの多さに感謝しています。面談や講演会、カフェ、著書を通して、樋野先生が出される「言葉の処方箋」に、多くの方が救われると同時に、私と同様、本当の言葉を学びなおす機会を受け取っている方も多いのではないかと思います。

[caption id="attachment_1212" align="alignleft" width="351"]松本がん哲学みずたまカフェにて2019年3月30日 松本がん哲学みずたまカフェ(あがたの森文化会館)2019年3月30日[/caption]

松本がん哲学みずたまカフェの運営に

[caption id="attachment_1213" align="alignleft" width="337"]松本がん哲学みずたまカフェにて2019年3月30日② 松本がん哲学みずたまカフェにて2019年3月30日②[/caption]

協力して下さっている皆さんに、こんな素敵な誕生日プレゼントを頂きました♪歓喜の瞬間です。ありがとうございました🌸

 

ひまわり担当🌻齋藤智恵美