「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第35回『一億本の向日葵』 ~「決める」こと~

第35回『一億本の向日葵』

~「決める」こと~

元号「令和」になり、ゴールデンウィークも何となくお祭りのような明るい雰囲気に包まれています。新しい年を迎える時のように、これからをどう生きようかと心新たにする人も多いのではないでしょうか。私自身もそのような気持ちを抱きつつ、この数日を過ごしております。そんな中「決める」ということについても考えました。日常の中には「決める」という行為が散りばめられています。何時に起きて、何を食べて、何を着て、何をする・・・など、私たちの活動は「決める」ことから始まっています。言われてやったので自分で決めたつもりはない!と思うような出来事であっても、そこは委ねることを決めるという行為があります。私にとって「決める」という行為は怖いことでもあり、腹が決まることでもあります。逆に言えば「決めない」ことは楽でもあり、また不安と向き合い続けることでもあります。10代の頃、私はジェットコースターに乗るのが好きでした。(今も好きですが)何度も乗って経験したことですが、ジェットコースターの椅子に完全に身を任している時に比べ、背もたれから少し背を放し、前のめりに手すりを掴む方が、不思議と恐怖感は和らぎます。私はそれを「怖い怖いと抵抗している時が一番怖い=ジェットコースターの法則」と言っていますが(笑)、同じ状況であっても抵抗している時には恐怖感はどんどん増し、逆に自分から飛び込む姿勢になった時に、恐怖感は和らぐのです。これはジェットコースターに限ったことではなく、今回書いている「決める」ことについても同じように感じています。「決める」ことには、それに伴う利益も不利益も両方受け入れる覚悟が必要なのできっと怖さを感じるのでしょう。しかし「怖い。怖い。」と決められずにいる時に一番恐怖を感じているのではないでしょうか。「決める」ことはそれだけでもすごい影響力を持っているのだと感じています。

――自由を得るための道は、今そこにいる状況から逃げ出すことではなく、そこに踏みとどまり、考えうる限りの知恵を出し努力をし、不自由を楽しめるように変えてしまうこと。考えて工夫をし、今いる環境で自分を納得させる道を見つけること。それこそが自由を得るということ――精神科医であり、「生きがいについて」などの著書を執筆された神谷美恵子氏は著書の中で、自由についてこう語っていました。

決めることも決めないことも自由であるけれど、決めることの先に本当の自由が存在しているのだと深く考える機会となりました。そしてジェットコースターの法則(笑)の体感は、今までもこれからも、勇気を出して飛び込み、前のめりに取り組むことへの勇気を与えてくれています。

 

ひまわり担当🌻齋藤智恵美