「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第38回『一億本の向日葵』 ~決して奪われることない力~   

第38回『一億本の向日葵』

~決して奪われることない力~

息子が祖父母の家の庭に蒔いた向日葵の種。土壌からの栄養をぐんぐん吸収し、ポコポコと可愛らしい芽を出し始めました。自慢げに案内してくれた息子の身長を超え、夏には大輪の花を咲かせるのかなと今から楽しみにしています。週末に開催した松本がん哲学みずたまカフェには14名の方が足を運んで下さいました。今回は、八ヶ岳メディカルカフェを通してご縁を頂いた松本市で「心の健康支援室」を主宰されている中村章人先生と奥様の芳枝さんをお迎えして、不安をテーマにお話をお聞きしました。大学で心理学をご専門とされていた中村先生が、体の病気がもとでコントロールできないほどの不安を抱え過ごした日々をきっかけに始められたという「心の相談支援室」。自分の中にある不安に対してより具体的に向き合う方法などをお話して下さいました。「心の相談支援室」で大事にされていることは、“支援”とはついているけれど、対等な立場で対話をし、ありのままの思いに耳を傾けることですと穏やかにお話される先生の姿から、樋野先生がお話される「馬を降りて花を見る」の意味を考えました。支援する側とされる側、看護する側とされる側、助ける側と助けられる側・・・。私たちは何か問題を抱えた時に「~される側」という受け身の立場に身を置くことがあります。その時にも自分の命を生きる軸は自分からずれることはありませんが、「~する側」に主導権を渡してしまっているように感じることもあります。そのような時に「馬を降りて花を見る=対等な立場」で一緒に問題と向き合ってくれる人の存在は、決して奪われることのない自分の命を生きる力に気付かせてくれます。自分で考え、自分で決めていくことの大変さはありますが、対等な立場で見守ってくれている存在はきっと大きな支えとなるのではないでしょうか。私たちが「決して奪われることのない生きる力」を実感できたら、今日や明日も違って見えてくるかもしれません。

「いぬのおまわりさん=困っている人と一緒に困ってくれる人」の現代的意義は、「~する側、される側」.の枠を超えたところにあると感じています。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美