「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第47回『一億本の向日葵』~自分にしかできないこと~

第47回『一億本の向日葵』

~自分にしかできないこと~

私が住む松本にも陽ざしが戻って、夏の暑さを感じるようになりました。7月27日は「松本がん哲学みずたまカフェ」の開催日。台風が近づいている中、県内外から17名の方が参加して下さいました。私が主催者、として運営させて頂いている松本がん哲学みずたまカフェは、お恥ずかしいながら、常に“空っぽの器補強工事中”です。それを見かねた参加者の皆さまが、器から水が漏れださないように、いつも温かくサポートして下さいます。そんなカフェは、いつも温かな空気に包まれています。そんな流れで、カフェ終了後、自然と会場外のフロアに置かれたソファに皆さんが集まり、カフェの第二部のような風景が、ほぼ毎回見られています。そんなカフェの存在に助けられているのは、紛れもなく私自身だと思っています。皆さま、いつもありがとうございます。

「自分にしかできないこと」。がん哲学外来メディカル・カフェは、それをサポートする場所だと私は思っています。自分ががんになったこと、大切な人ががんになったこと、思いもよらない出来事に巻き込まれたことは、誰に責任を問うことはできませんし、決して責任を問うべきことではありません。しかし、多くの人は意識的に、または無意識的に、ここの責任を自分に問うている時間が少なからずあるのではないかと思います。また、治療の選択や療養に伴う諸々の選択にも、“責任”というものが付いて回ります。私も乳がんが見つかり、治療をする中で、この“責任”という言葉を、自分からも、他人からも、何度となく掛けられていたように思います。それが正しい人間の考え方だと思い込み、その度に、窮屈で苦しい、孤独な思いを感じていました。そんな時に、樋野先生の「正論より配慮だよ」という言葉に助けられた方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。今になって思います。もし、自分が何かの責任を負わなければならないとしたら、それはただ一つ、今をどう生きるかという毎瞬の選択だけだと。ここでの責任=覚悟となります。今まで重くのしかかっていた言葉が、今度は自分を励ます言葉に変化します。今をどう生きるのか、これからをどう生きようときめるのかは、自分にしかできません。それは病床にあっても、何事もなく過ごしていても、変わらず持ち続けている大きな力だと思います。がん哲学外来の役割は、その力を思い出してもらい、そっと背中を押すことだと思っています。現在、色々なところでひまわりが咲いています。短い生命を全力全身で生きる姿を見せてくれています。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美