「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第59回『一億本の向日葵』~メディカルヴィレッジには~

第59回『一億本の向日葵』

~メディカルヴィレッジには~

10月19日㈯長野県小諸市文化センターで開催された「第2回日本メディカルヴィレッジ学会in小諸」に参加させて頂きました。台風により交通事情が不安定な中でしたが、小諸市の市民の方々だけでなく、様々な地域の方々が会場に足を運ばれていました。がんと共に地域で生きることを支える制度や機関での取り組み、複数のがんを経験された方の体験談など、多角的な視点が盛り込まれていました。長野県という地域は全国的に見て訪問看護の受け皿が多く、自宅で自分らしい最期を迎えたいと思う人にとって恵まれた地域であることも知りました。シンポジストの方々の日々の取り組みは、がんと共に生きる人全般に向けられているようで、目の前にいる“あなた”というがんと生きる一人のかけがえのない存在に向けられていることを深く実感しました。学会の締めくくりは樋野先生のご講演でした。会場からは熱心なまなざしと時々起こる笑い声で包まれました。

樋野先生はご講演の中で、大学の講義で寝ている学生についてお話されました。「ドリームとヴィジョンがなければ人は寝るよ!」もしかして会場でウトウトされていた方もいらっしゃるのか!会場は笑いに包まれました。ドリームやヴィジョンは、その人の「今」の在り方に大きく影響するということ、メディカルヴィレッジを生きた「村」にするには、ドリームとヴィジョンが必要だという学びになりました。社会、個人がそれぞれにドリームやヴィジョンを持つこと。自分らしい生き方・死に方には、自分自身がドリームやヴィジョンを描くこと、それを言葉にする、表現することが大切です。豊富な受け皿もドリームやヴィジョンに沿って、必要に応じて活用されることが本来の役割だと思います。貴重な体験談を語って下さった当事者の油井早苗さんが手術の際に医師から「~どうしますか?」と最終決断を促された時、「手術をするかしないかを私が決めなきゃいけないの!」と初めて自分で学ぶ必要を感じたとお話して下さいました。自分の病や治療に関することだけでなく、自分が何を大切にしたいのか、自分がどんなことを思っているのか、自分がどう生きたいのか、どう死にたいのかを静思する時間と支えてくれる人への情報共有が、メディカルヴィレッジをより人間らしい場所にしてくれると思いました。

素晴らしい時間をありがとうございました♪

ひまわり担当🌻齋藤智恵美