「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第63回『一億本の向日葵』 ~弱さは誰かを温める羽衣になる~

第63回『一億本の向日葵』

~弱さは誰かを温める羽衣になる~

今週は多面的に“がんと生きる”ことを考える機会に恵まれました。

樋野先生にご紹介頂き、7名と一匹のワンちゃんで訪れた長野県駒ケ根市にある「駒ヶ根パノラマ愛の家」。高台に位置し、目の前に広がる駒ヶ岳と、リンゴ畑に囲まれた長閑で静かな場所、そして今村都牧師やそこに集う方々の優しさや朗らかさに触れさせて頂きました。“がんと共に生きる人”が時に必要とする“静かに心と体を休め、息をつける場所”がそこにはあると感じました。張りつめた緊張の糸を緩めることを許される場所。「駒ヶ根パノラマ愛の家」の環境と時間を包み込む大きな空っぽの器を、がん哲学外来のメディカル・ヴィレッジの拠点として活用させて頂ける事に心から感動しました。早速3月20日㈮にメディカル・カフェの開設記念&映画上映会を開催することが決まり、春と共に喜びが届きそうです。

今週はその他に、高校におけるがん教育の授業にも参加させて頂きました。その授業は今まで見せて頂いたがん教育の授業とは違った形でとても興味深く感じられました。がんを取り巻く様々な人の立場から一つの立場を選び、そこから「がん」をテーマに探求していく授業でした。立場が違うことで「がん」見え方もまた違ってきますが、知識だけでなく、情報を集め、深く掘り下げて考える。それを共有することを通して持つことができる、自分のがん、大切な人のがん、社会の中のがんの視点は、生徒の皆さんが今後様々な形で「がん」と出会うことがあった時に生きてくるのではないかと感じました。また、これから様々な勉強をして、社会を創造していく生徒さんの多くが、この授業を通して、がんと共に生きる人を取り巻く社会的な問題や、がんの存在に対しての改善策を考えてくれている事をとても頼もしく思うことと同時に「助ける人」と「助けられる人」という垣根が見えてきました。

「助ける人」である時に、自分の痛みや弱さも許せる人でありますように。

「助けられる人」である時に、自分の強さを思い出せますように。

その役割はいつも入れ替わりを繰り返していること忘れませんように。

必死に隠そうとしているその痛みや弱さを開放した時、誰かを温める羽衣になる。そんな風景を目の当たりにして、自分の中にも、高校生の中にも、楕円形のこころが程よく育っていくことを願いました。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美