「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第67回『一億本の向日葵』~大切な時間~

第67回『一億本の向日葵』

~大切な時間~

12月14日付の東京新聞に、がん哲学外来のドキュメンタリー映画『がんと生きる 言葉の処方箋』の野澤和之監督のインタビュー記事が掲載されました。メールに添付頂いた記事の小さな文字と社会に投げかけるようなメッセージを目で追っていましたら、ある一文が私の胸にグッと迫ってきました。

入院していると夜中二時、三時に目が覚める。とっても不安ですよ。寂寥感というか。あの孤独感はがんの問題じゃない。言ってみれば、存在の理由ですよ。あるでしょう、さみしい時が。愛する人や家族がいてもいなくても。人間という動物の孤独感。それはあって当然。(12/14東京新聞「あの人に迫る」より引用)

「存在の理由」

「人間という動物の孤独感」

私は治療当時、担当医師や家族、身近な友人の言葉を退けて、自分の意思を優先させた時がありました。もらった猶予時間は約3カ月。自分の中で大切にしている感覚と、手遅れになるかもしれないという恐怖、「誰にも弱音は吐けない。もう助は求められない」という孤立感、周囲に心配をかけていることへの罪悪感、色々な思いの狭間で過ごしたこの時間は、臨場感を持って思い出すと今でもキューっと胸を締め付けます。この状況は孤独というよりも、孤立という言葉が合っているかもしれませんが、この3か月間で感じたのは、「存在を脅かすほどの孤独感」。しかし、逆説的であるようですが、それが私の存在の理由でした。生きているから、生きたいから感じる生命体の孤独なのだと思いました。それは決して容易ではなく、大きな辛さを伴う体験でしたが、今もう一度その時点に戻ったとしても、同じ選択をするのだろうと思います。それほどにとてもとても大切な経験でした。それから2年程経って、私は樋野先生の「がん哲学」という言葉に出会いました。その出会いは私にとって、孤独な3か月間の意味を肯定してもらえたという感動そのものでした。

今はインターネットで24時間何かと繋がり続けることができる時代ですが、私たち人間の深くに根強く存在している孤独への怖さは、完全には癒えないのだと思います。それが万人に共通する人間という動物としての孤独感であるからこそ、「この悲しみは私だけのものではない」と腹を据えて向き合う勇気と、他者への共感が生まれるのではないかと思います。

12月15日、22日、29日とSBC信越放送のラジオ番組 中澤佳子さんの『うっぴぃステーション』にゲスト出演させて頂きます♪中澤さんの素敵な声に導かれて、がん哲学について熱く(笑)語ってます。長野県外の方もラジコでの視聴が可能です。

うっぴぃステーション収録風景(左は中澤佳子さん)

ひまわり担当🌻齋藤智恵美