「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第68回『一億本の向日葵』~溢れる感情の泉~

第68回『一億本の向日葵』

~溢れる感情の泉~

平成から令和へと新しい時代への変化を感じられた2019年最後の松本がん哲学みずたまカフェを本日12月22日に開催致しました。お一人お一人が大切に歩んで来られたこの一年を振り返り、これからの景色を眺めました。それぞれの方が歩まれた道には、喜びだけではなく、悲しみや葛藤、戸惑いが散りばめられていて、真っ直ぐ歩むことなんてできないこともあったのだと思います。時にバランスを崩しながら、懸命に歩んできた道。どんな形であっても、それを否定できる人は誰もいないはずです。今日、ここにいるその人がただただ愛おしい存在そのものでした。私は今年1年を通して、本当にたくさんの方に出会い、色々なお話を聴かせて頂きました。その中で感じたことは、その人を通して見えてくる大切な人の存在です。自分の経験を通して大切な人と出会い直していくことを、こんなにも実感したことは、今までにありませんでした。その大切な人がすでに旅立っていたとしても、もう一度出会い直し、愛情を受け取っていく。愛情を受け取る時には、自然と心が開いて、例え号泣していたとしても、表情はとても優しく、そして幼く、本来のその人そのものです。

「溢れる感情」

私も時に、涙が止まらなくなって、溢れだす感情に飲まれてしまうのではないかと怖くなることがあります。今はもう会えなくなった大切な人の愛情を今になって受け取った時、感情と涙が泉のように噴き出してきます。どれだけ私は、自分という存在は大切にされていたのだろうと。そして、それを受け取れるタイミングは不思議な計らいによって、いずれやってくることも知りました。誰かを想った時に溢れる涙や感情は、例え悲しみを伴っていたとしても、豊かさそのものです。それは生きる勇気や、生きる力に繋がるものでした。

12月17日に岐阜県不破郡垂井町の垂井北中学校の2年生に向けて、私のがん体験についてお話する機会を頂きました。お話の前には、校長先生の素敵な計らいで、合唱と生徒さんと食べる給食という2つのプレゼントを頂きました。生徒さんと先生から伝わる楽しさやワクワク感。今年の大きな思い出です!この一年、たくさんの人の心に垣間見えた大切な誰かの存在が、私の口を通して「あなたは誰かにとって本当に大切な存在です。」という魂の叫びとして生徒の皆さんに届けられたことを嬉しく思います。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美