第77回『一億本の向日葵』
~AERA「時代の肖像 樋野興夫」を読んで~
私が樋野先生と初めてお会いしたのは、2017年7月軽井沢でのことです。その月から住まいのある松本市で、がん哲学外来メディカルカフェを始めることが決まっていた私は、とても緊張しながら樋野先生にご挨拶をしたのを覚えています。その時に見せて下さったにこやかで温もりのある表情が、そのまま雑誌AERAの「時代の肖像」の最初のページに載っています。樋野先生に初めてお会いする半年ほど前に、私は「がん哲学」という言葉に出会いました。目に飛び込んできたその言葉に、私は衝撃と同時に、ずっと探していたものに再会できたような懐かしさを感じ、とても不思議な気持ちになりました。それから樋野先生の著書を読み、「がん哲学」について学び始めました。佐久ひとときカフェの星野昭江さんが企画して下さった読書会にも参加させて頂き、一つ一つ自分の中に吸収しました。その中で、私がとてもうれしかったことは、がんの病理診断を行う病理医であり、がん研究をされる研究者である樋野先生が、がん細胞をただの悪者として扱うだけでなく、一つの存在として秀でている部分を認めていらっしゃることでした。そこに愛があるように思いました。樋野先生と直接お会いしたことがある方は感じられていると思いますが、「あなたの存在はそのままで素晴らしいですよ」と、樋野先生の振る舞いや声色には非言語の優しさが含まれています。それは、それぞれの存在を認め合うという寛容な姿勢から醸し出されているのだと思います。ここ数か月で40名(匹・羽?)以上に増えた樋野動物園(架空ですが)。テーマは多様性とのことで、個性の違いを知り、お互いの存在を認め合う社会の縮図であると、私はイメージしています。がん哲学の活動の中でも、樋野先生の在り方、誰に対しても変わることのない寛容さ、優しさ、本当に大切なものに焦点を絞るセンスを日々学ばせて頂いておりますが、その樋野先生の背後には、先生自身が受け取ってこられたたくさんの愛が存在していることを、「時代の肖像」を読んで知ることができました。受け取ってこられたそれらの愛を何倍にも膨らませながら、出会う人々に広く手渡していく樋野先生の人生は、本当に彩り豊かなのだと思います。樋野先生の背中を追いかけ続けておりますが、「暇気な風貌」「脇を甘くすること」にはまだまだ修行が必要な私です・・・(笑)。
樋野先生に出会えましたことを心から感謝しております。
ひまわり🌻&パンダ🐼担当 齋藤智恵美