第78回『一億本の向日葵』
~今思い出すこと~
ともだちって かぜがうつっても へいきだって いってくれるひと。
ともだちって いっしょに かえりたくなるひと。
ともだちって おかあさんや おとうさんにも いえないことを そうだんできるひと。
ともだちって みんなが いっちゃったあとも まっててくれるひと。
ともだちって そばにいないときにも いま どうしてるかなって おもいだすひと。
『ともだち』谷川俊太郎・文 和田誠・絵 の 最初の5ページの文章です。息子が小学校に入学したときに、本屋さんで購入した本です。
今、コロナウィルスが全国・世界に大きな影響を及ぼしていますが、昨日買い物に出かけた際に、スーパーマーケットで商品棚が空っぽになっていたり、買い物をしている人たちのいつもと違う雰囲気から、事の異常さを感じました。日頃、テレビを見る習慣がない私にとってはなかなか衝撃的な景色でした。未知の感染症というのは、それだけで多くの不安を与えるのだと思います。漠然とした不安が日本全体を覆っている今の状況で、自分が何を知り、何を考え、どう行動するのか―。新型のウィルスに関する確かで詳しい情報を自分の目で読むこと、これは漠然とした不安を減少させるのにとてもいい方法だと思います。何だかよくわからないものに追いかけられることこそ怖いことはありません。そんな時、私は感染したときにことを、意図的に具体的に想像してみます。どんな症状がでるのか、周囲への影響はどうだろうかと一度その怖さを味わってみるのです。そうすることで、私自身は地に足がついたような安心を感じることができます。方法は人それぞれだと思いますが、自分に安心を取り戻す方法がきっとあるのだと思います。
さて、冒頭で谷川俊太郎さんの『ともだち』という本の一節をご紹介しました。私はこの文を読んで、フッと今の騒動の中での自分の在り方が分かった気がしました。
この騒動が大きなうねりとなって、全国を駆け巡って、そちらばかりに気を取られてしまいますが、その中には無数の「誰か」がいます。がん治療中や持病持ちの方は、普段以上に不安や孤独を感じていることでしょう。また、実際に感染してしまった方は、症状に加え、社会の中で何かしらの痛みを感じている方もいらっしゃると思います。卒業式を目前にした休校措置は、さまざまな悲しさや寂しさを伴うでしょう。それを想像しますと、「誰か」よりも「何か」ばかりが優先されることは、とても寂しいなと思いました。
「何か」よりも「誰か」にフォーカスして、物事を見つめていたい。
それは、絵本が教えてくれた私の在り方でした。
ひまわり&パンダ担当🌻齋藤智恵美