「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第100回『一億本の向日葵』~二つとしてない、同じ花~

第100回『一億本の向日葵』

~二つとしてない、同じ花~

約2年前の2018年9月に開設したこの「心に咲く花」会のHP。開設と同時に、始まった樋野興夫先生のブログ「心に咲く花会」、それを追いかけるように始めた「一億本の向日葵」もおかげさまで100回を迎えることができました。拙い文章を毎週の読んで下さった皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。「一億本の向日葵」のブログは今回で最終回とさせて頂きますが、一週間に一度、テーマを設けて一定量の文章を書くことは、私の鍛錬になったと同時に、感情や考え、価値観を文字という物質化する訓練になりました。「齋藤さんもブログを書いてみては?」ときっかけを下さった樋野興夫先生のお心遣いに深く感謝しております。

 がん哲学外来の活動に関わらせて頂き、松本がん哲学みずたまカフェを開設して、丸3年が経ちました。本当にたくさんの方に出会い、そして本当にたくさんの人生の物語を聴かせて頂いてきました。苦しい想いや悩みを吐き出したい、誰かに話を聴いてもらいたいという思いであっても、誰一人例外なく、いつも人生の物語は語られていました。悲しみも苦しみも、楽しみも喜びも、表現に使われる言葉は同じであっても皆さん全員少しずつ違っていました。時間や環境を共にしている私たちですが、自分の人生の物語を語れるのは、自分以外誰もいない・・・とつくづく感じます。そして、言葉にすることで、自分の人生の輪郭がくっきりしはじめ、誰かと比べることなどできないだけでなく、比べても意味のないことだとわかります。私たち一人一人が生きている今この時には、それだけとてつもない価値があり、掛けがえないものです。あなたの目を通して見える世界は、あなただけが語れるのです。心の花は、陰に隠れてひっそりと咲いているかもしれません。でも、あなたに見つけてもらうのをずっと心待ちにしています。ぜひあなたの心の目で見つけてあげてください。

 誰かの心に寄り添おうとする時、自分の心が置いてけぼりになることがあります。誰かの心に寄り添うように、自分の心にも寄り添うこと。そうすることで、それぞれの心に咲く花を見失わず、カラフルに彩られた世界を見ることができるのだと思います。美しい世界をいつでも思い出せますように。

みなさまの温かなまなざしに、心から感謝申し上げます。

ひまわり&パンダ担当🌻齋藤智恵美