「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第143回「心に咲く花会」「人間学」は世界共通である 〜 「国際的地位を高むる途」 〜

第143回「心に咲く花会」

人間学」は世界共通である 〜 「国際的地位を高むる途」〜

2021年5月6日 ルーテル学院大学での『現代生命科学』授業に赴いた。  今回は、教科書『カラーで学べる 病理学』の『病理学の領域』&『細胞・組織とその障害』の箇所を音読しながら、多数の質問を受けながら進めた。  大変、充実した時であった。  「教育」の5ヶ条、(1)幅の広さ(2)弾力性に富む(3)洞察と識見のひらめき(4)示唆的な学風(5)「人間力のあるケア」の実践であろう。  また、筆者が若き日に 読書を通して学んだ『新渡戸稲造の言葉』(下記)が、「現代生命科学」にも生きる「理念」であることを痛感した。

『人生は百貨店のようなものだ』

『人間活動の目的は世界の開拓にある』

『つらいことがあっても顔には出すな』

『状況の悪いときこそ明るい面を見よ』

何故か、筆者の「ロンドンの旅」(2014年)(添付)の文章が鮮明に思い出された。  

「がん哲学カフェ in UK & 緩和ケアの祖を訪ねる旅」(毎日新聞夕刊 2014324日付け「がん哲学外来」海を越えて)を行った。  324日は、緩和ケアの発祥であるSt. Joseph’s hospiceの見学・セミナーに出席した。  特に「First Contact Team」、「Volunteering」のコンセプト&内容には、大いなる感動を覚えた。  「患者視点のチーム医療」の在り方の学びであり、日本国の遅れも痛感した。誇りを持って、役割を遂行されている、数百人の多数のボランテイアの生き生きとした風貌には、人間の使命をも感じた。  325日は、Charing Cross Hospitalの敷地内にあるMaggie’s Centreを訪問した。Centre Headのお話を伺い、存在の目的と意義を学んだ。  自由に、ふらーと立ち寄れる相談の場があることは、患者・家族にとって、大いに慰めされることであろう。  326日は、現代ホスピスの祖と言われるCicely Saundersが始めたSt.Christopher’s hospiceの見学・セミナーに出席した。  特に「Nursing」、「Social Work & Bereavement〈死別〉」について教育の大切さを学んだ。  ロンドン大学では、まず、Death Caféの提唱者のお話を聴き、その後、6〜7名の小テーブルに別れて対話し、休憩を挟み、私は、講演『「がん哲学~われ21世紀の新渡戸稲造とならん〜」(「Cancer Philosophy I want to become the Nitobe Inazo (18621933) of the 21 century〜」)』の機会が与えられた。  会場一杯で、在英日本人、英国人も、全くと言ってよいほど、ご存じない「がん哲学&新渡戸稲造」の話を熱心に、聴いて下さった。  「がん哲学&新渡戸稲造」は、現代の世界情勢と、混迷感のある時代において、日本国の存在を語るのに、極めて良いテーマであると、実感する時となった。  「人間学」は世界共通である。  「チアフルな顔付を以て人に接し、見ず知らずの人に対しても、ーー、それがーー日本の国際的地位を高むる途である、」(『余の尊敬する人物:矢内原忠雄 著(岩波新書)』「新渡戸博士」より)。

まさに、人生は、想い出づくりである。