「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第196回「心に咲く花会」 謙虚で、常に前に向かって努力 〜 生きる方法を考える 〜

2022年5月13日 病理組織診断の業務を済ませ、順天堂大学医学部医学系研究等倫理委員会に出席した。 【「病理学」とは、病気の根幹を追求しようとする「the study of the diseased tissues」である。病気の本態が遺伝子レベルで具体的に考えられるようになり、21世紀は、病理学にとってエキサイティングな時代の到来である。「広々とした病理学」とは、「病理学には限りがないことをよく知っていて、新しいことにも自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力しているイメージ」】は、癌研時代の恩師 菅野晴夫(1925-2016)先生から学んだものである。 筆者の病理医としての原点である。

 

2022年5月14日は、 早稲田大学エクステンションセンター中野校(東京都中野区)で、2022年春講座『がんと生きる哲学』〜 医師との対話を通して「がん」と生きる方法を考える 〜」に赴いた。 教科書は、新刊『がん細胞から学んだ生き方』(へるす出版2021年)(添付)を使用した。【「1919年パリ講和会議が開催されている頃、『スペインかぜ』がフランスでも猛威をふるっていて、パンデミック(世界流行)で、感染者6億人、死者4,000万~5,000万人にも達したと推定されている」と、以前に聞いたものである。 そのとき、新渡戸稲造(1862-1933)はパリにいて、その後、国際連盟事務次長に就任している。ドーマス・カーライル(Thomas Carlyle;1795-1881)の影響を受けた新渡戸稲造は、「common sense(社会常識)を備えもった柔軟性のある人格者」と謳われている。「コロナ時代の生き方」が問われている現在、「新渡戸稲造なら、何と語るのであろうか?」の静思の日々である。「やるだけのことはやって、後のことは心の中で、そっと心配しておれば良いではないか。どうせなるようにしかならないよ」(勝海舟;1823-1899)の言葉が、鮮明に蘇る日々である。まさに、「ひとり、静まる時をもちましょう」は、読書の原点でもあろう。 本書が、少しでも「『何を学ぶか』も大事だが、それ以上に『誰に出会うか』がもっと大切である」のお役に立てば、幸いである。】 (page 169-170)。 今回は、第1章「医療者としての原点」の『畳一枚ほどの墓』:南原繁(1889-1974)、新渡戸稲造内村鑑三(1861-1930)、矢内原忠雄(1893-1961)、吉田富三(1903-1973)を音読しながら進めた。 早速、「次回も楽しみにしております。」との心温まるメールを頂いた。


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