「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第200回「心に咲く花会」 手をさしのべる 〜 温かい人間としての関係 〜

この度、『心に咲く花会』が第200回を迎える。 ただただ感謝である。 2022年6月8日 順天堂大学 大学院医学研究科修士課程 (医科学コース)『がんと遺伝子』の講義『環境因子とがん』(19:45~21:15)に赴いた。 当日は、順天堂大学 保健医療学部 診療放射線学科の3時限目(13:10~14:40)の授業『病理学概論』、4時限目(14:50~16:00)の授業『がん医療科学』で、『3連チャン症候群』であった。 授業では、1880年代の「足尾鉱毒事件」、2005年の「アスベスト事件」はじめ約27の事件を示した。

 

「初期条件がある範囲にあると、初期の変異が経時的変化とともに、分子の相互作用によって、様々に拡大し、将来予測が不可能になる。 これは初期のわずかの変異で大きな効果が出ることを意味する。 非平衡状態にあり外部と相互作用する開かれた複雑系では、初期状態(Genotype)が同じでも、外部から、意識的に適時に介入すれば、ある特異点(Phenotype)で分岐し多様性のある制御(Dramatype)が可能になるはずである。病気はDramatypeなる故に、予防、治療が成立する。」と語った。

 

他国からの大学院生も多数おられ、
1)がん細胞は、他人の血管に入っても生きられるのですか?
2)人間の寿命は120歳。最も長生きする生物は何ですか?
3)発がん因子の定義とは?
などなどの質問も豊富であった。 また、最後のスライドで示した下記の
(1)「学問的、科学的な責任」で、病気を診断・治療するーー>学者的な面
(2)「人間的な責任」で、手をさしのべるーー>患者と温かい人間としての関係
について、『「医療者の2つの使命」に、大変感動を覚えました』とのコメントが授業後に寄せられた。 大いに感激した。

医療通訳」所属の学生さんも8人出席されておられ、もし、筆者の新刊を英語、中国語、韓国語に訳して頂ければ、望外の喜びである。