「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第206回「心に咲く花会」 教育の根本 〜 「暇げな風貌」と「偉大なるお節介」 〜

2022年7月21日 恵泉女学園から、東京女子大学の理事会に向かった。 女子教育に 大いなる理解を示した新渡戸稲造(1862-1933: 東京女子大学初代学長)が、河井道(1877-1953: 恵泉女学園 創立者)、津田梅子(1864―1929: 女子英學塾 創立者)、安井てつ(1870-1945: 東京女子大学 第2代学長)を 援護した三人に共通するのは「洗練された自尊心」の人格像であり、 まさに、『種を蒔く人になりなさい』の実践者であろう。「優雅な感情を養うは、他人の苦痛に対する思いやりを生む。しかして他人の感情を尊敬することから生ずる謙遜・慇懃の心は礼の根本をなす」(新渡戸稲造)が、鮮明に蘇って来ました。

 

「教育」: 10カ条
1) 世界の動向を見極めつつ歴史を通して今を見ていく
2) 俯瞰的に理を理解し「理念を持って現実に向かい、現実の中に理念」を問う人材の育成
3) 複眼の思考を持ち、視野狭窄にならず、教養を深め、時代を読む「具眼の士」の種蒔き
4) 自分の研究に自信があって、世の流行り廃りに一喜一憂せず、あくせくしない態度
5) 軽やかに、そしてものを楽しむ。自らの強みを基盤とする。
6) 学には限りないことをよく知っていて、新しいことにも、自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力する。
7) 段階ごとに辛抱強く、丁寧に仕上げていく。 最後に立派に完成する。
8) 事に当たっては、考え抜いて日本の持つパワーを充分に発揮して大きな仕事をする
9) 自分のオリジナルで流行を作れ!
10) 昔の命題は、今日の命題であり、将来のそれでもある。

 

他の人々に注意を向けるには、「暇げな風貌」が必要であると考える。「暇げな風貌」と「偉大なるお節介」は、悠々と謙虚を生むことあろう。「偉大なるお節介症候群」が蔓延化すれば、如何に、「悩める人々の慰め」となろう。「ユーモア(you more) に溢れ、心優しく、俯瞰的な大局観のある人物」の育成訓練でもある。 まさに、「本質的な人間教育の見直し」の時代的様相である。 新渡戸稲造は、「『最も剛毅なる者は最も柔和なる者であり、愛ある者は勇敢なるものである』とは普遍的に真理である。」と述べている。 ごく簡単に言えば、「弱いものいじめをするな」ということであり、「なすべきことをなそうとする愛」ということであろう。 まさに「他人の苦痛に対する思いやり」は、教育の根本である。