「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第207回「心に咲く花会」 心の診察室 〜 先人達の知恵の紐解き 〜

2022年7月28日「福島県立医科大学付属病院 がん相談支援センター」での『吉田富三記念 福島がん哲学外来』に赴いた。【吉田富三(1903~1973): 福島県浅川町生まれの病理学者。「吉田肉腫」及び「腹水肝がん」の発見で世界的に知られ、文化勲章を受けた。 学者としてのみならず、がんという病気を通じて社会の原理にまで言及する言葉を多く残す。】と紹介されている。 また、【福島県出身の世界的病理学者 吉田富三 博士を記念して、博士の孫弟子である樋野興夫 先生が『福島がん哲学外来』を開設しました。 がんと共に生きる患者/ご家族の思いや悩みを ともに考える“心の診察室”です。 対象/がん患者さんやご家族、 完全予約制費用/無料。投薬などの医療行為は行いません。 がんと共に生きる意味やコツを 樋野先生が先人達の知恵を紐解き一緒に考えます。】と謳わられている。 今回の個人面談も大変、有意義な貴重な時が与えられた。

 

吉田富三の愛弟子が 筆者の恩師:菅野晴夫 先生(1925-2016)である。筆者は、菅野晴夫 先生と福島の浅川町に吉田富三記念館と協力して2003年に吉田富三生誕100年事業を実施した。吉田富三は「自分のオリジナルで流行をつくれ」と言い、事にあたっては、考え抜いて日本の持つパワーを十分に発揮して大きな仕事を成し遂げた。 筆者は、吉田富三生誕100年の時、吉田富三の著書を読み、吉田富三は「顕微鏡を考える道具に使った最初の思想家」であり、顕微鏡で見たがん細胞の映像から得た「がん細胞で起こることは人間社会でも起こる」ということが吉田富三の哲学なのだと思った。それを、筆者は『がん哲学』と称したわけである。 先人の精神を学んだことが、自分の専門以外のことであっても 勇気を持って声に出し、行動できるという自信になり『がん哲学外来』が出来たと思っている。

 

吉田富三は病理学という専門分野を極め、さらにまた、医療制度や国語政策にも取り組み、重要な提言を行っている。吉田富三は、「人体の中で起こっていることは、社会と連動している」といい「がん細胞に起こることは必ず人間社会にも起こる」といっている。 ここに、『がん哲学』の源流がある。