「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第236回「心に咲く花会」 『温故創新』〜 自由にして勇気ある行動 〜

2023年1月10日 私大連(日本私立大学連盟)の新年交歓会(アルカデイア市ヶ谷に於いて)に、筆者は恵泉女学園理事長として出席の機会が与えられた。 全国から約70校から参加されていた。 田中愛治会長(早稲田大学総長)の『年頭あいさつ』で始まった。東京女子大学からも、順天堂大学からも出席されていた。  

 

今回、吉田富三(1903-1973)の『医学教育改革のための提案6条』(1970)が鮮明に蘇って来た。『医療第27巻第1号(1973年1月号)』を読み直した。 第2条の【「医科系大学には、 国・公・私立等の区別のないことが望まれる。改革はこの意味の無差別を目標とし、速かにこれに到達する方向で進められるべきである。 この趣旨は、医師に対する国民の信頼が、先ずその出身校によって左右されるのは望ましくない といふことにあります。それなら全部を国立にといふ考えが出て来ますが、それは考へものだと思ふのです。 医師は官医に非らず、 商医に非らず、国民大衆の実生活の中にあって、大衆と共に生きて行くのが、その最も望まれる姿であります。その意味では、医科大学は私立経営がよいことになります。 併し医学教育は最も経費のかかる高等教育ですから、経費の半額ほどは国庫負担が必要と思はれます。 即ち総ての医科大学を、半額国庫負担の私立経営とするのが提案の骨子です。」】とある。 これが『真のリーダー』の『純度の高い専門性 と 社会的包容力』であろう! 現代において少しも減じていないことを実感する日々である。 時代の波は 寄せては返すが 『すべての始まりは人材』である。 まさに『温故知新』でなく『温故創新』である。 

『大学には、国・公・私立大学の区別を廃止すべし』は、筆者の『がん哲学 〜がん細胞から人間社会の病理を見る 〜』(2004年3月7日to be 出版;添付)にも引用されている。 『行動への意識の根源と原動力』を持ち『はしるべき行程』と『見据える勇気』の心得でもある。『時代を動かすリーダーの清々しい胆力』としての『人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動』(南原繁;1899-1974の『新渡戸稲造(1862-1933)先生』より)を、今回痛感した。貴重な『吉田富三の没後50年・生誕120年記念』ともなった。大変有意義な充実した『私大連の新年交歓会』であった。

 


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