「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第242回「心に咲く花会」 【「隙間」を埋める「対話の場」】 〜 悩みを「解消」する 〜

筆者は、2023年2月3日『肝炎等克服政策研究事業』評価委員として『研究成果発表会+評価委員会』にzoom参加した。 癌研時代、『肝癌におけるB型肝炎ウイルス(HBV)DNAの組み込み』を日本で最初に報告したものである(下記)。

Hino O.,et al.:Detection of hepatitis B virus DNA in hepatocellular carcinomas in Japan. Hepatology 4: 90-95, 1984

Hino O.,et al.:Relationship between serum and histochemical markers for hepatitis B virus and rate of viral integration in hepatocellular carcinomas in Japan. Int J Cancer 35: 5-10, 1985

Hino O.,et al.:Hepatitis B virus integration site in hepatocellular carcinoma at chromosome 17;18 translocation. Proc Natl Acad Sci U S A 83: 8338-8342, 1986

 

また、遺伝性腎発がんラットの原因遺伝子(Tsc2)を同定(tuberous sclerosis complex, TSC)し、日本結節性硬化症学会を設立した。 進行過程で高発現してくる新規遺伝子(Erc)を発見し、Erc遺伝子産物は、血中に分泌され、血液診断に使用できることを明らかにした。 そこで、筆者らは、検出するELISA (酵素結合免疫検査)測定キットの開発を行った。 それが、2005年日本で初めて『アスベスト中皮腫外来』を開設に繋がった。 さらに、外来で患者と接し、医療者と患者の『対話』の重要性を再認識すると同時に、『哲学的なアプローチ』が必要だとの思いに至り、2008年、医療者の立場からの『がんの知識の提供』ではなく、医療現場と患者、その家族の間にある【「隙間」を埋める「対話の場」】として順天堂大学で『がん哲学外来』を開設した。『がんであっても、病人ではない』充実した生き方をするための支援の一端を担う場の提供である。『がん哲学』は、人間そのものについて考える人間学であり、『がん哲学外来』とは、がんにまつわる治療の不安から人間関係の悩みまで、あらゆる相談に『対話』で患者さんの悩みを『解消』する手法である。『純度の高い専門性と社会的包容力』をもって、『ウイルス発がん』から『遺伝性がん』そして、『環境がん』、さらに『がん哲学』へと『不連続の連続性』で先進したものである。 本当に『不思議な人生の流れ』を痛感する日々である。