「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第40回『一億本の向日葵』~孤独な時間~

第40回『一億本の向日葵』

~孤独な時間~

『心に咲く花』会のこのホームページがサーバーエラーを起こし、画面も頭も真っ白になる一週間を過ごしておりました。深く理解できていない事柄のトラブルに直面すると、不安、恐怖が次々と襲ってきて、右往左往しながら時間だけが過ぎていく・・・そんな渦中に居て、孤独とはまるでお友達のようでした。

「一日一時間静思する時間を持つといい」と樋野先生はいつもお話して下さいます。私はどれだけ「一日に静思する時間」を設けることができているだろうかと問うてみると、正直なところ、私の思考はあっち行きこっち行きしていて、少しも静かではないのです。特に不安や恐怖に襲われた時ほど、文字通り落ち着かない状況です。ですが、徐々に時間が私の味方をしてくれるようになり、その落ち着かない自分の状況を静思するタイミングが自然と訪れました。あっち行きこっち行きしていた振り子の降り幅が、徐々に狭まっていくのを感じることができるようになるのです。私はこの過程を観察しながら、忌み嫌われがちな“孤独な時間”の大切さを改めて実感しました。「トラブルがあってね、大変でね!」と誰かに話したい、不安を受け止めてもらいたいという衝動、早くどうにかしたい気持ちは次々と湧いて出てきて、それを行動に移す時もあります。しかし、ホッとして一息つくのも束の間で、やはりそこには変わりなく動揺が存在していたのです。自分の中の交通整備は“孤独な時間”の中で行われます。交通整備の前に他者との対話の時間を持つことは、自分の行き先や障害物などを知る為にとても役に立つと思います。自分の視点を越えて、行き先や障害物を再確認できます。しかし、「ここから先は自分で決めることしかできない=自分で交通整備をする必要がある」ことが必ずあり、そこには“孤独な時間”が不可欠なのだと思います。やみくもに、孤独な時間がいいというわけではなく、孤独の質もとても重要です。他者を感じられる安心感の中での孤独なのか、全くひとりぼっちだと感じる孤独感なのか。時間というのは、私たちに与えられた大切な命の宝物です。その時間をどのように感じ、どのように過ごすのか。それは私たち一人一人の手に委ねられています。“孤独な時間”取り扱いが上手になれば、きっと親友のような存在になると私は思います。樋野先生の「カントリーボーイ」時代に培われた孤独な時間との信頼関係から紡ぎだされた「一日一時間の静思」という時間の持ち方を、私も大事にしていきたいと思います。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美