「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第7回『一億本の向日葵』 ~変わり種、その可能性は未知数~

第7回『一億本の向日葵』

~変わり種、その可能性は未知数~

10月18日㈭~21日まで、パシフィコ横浜で行われた『第56回日本癌治療学会学術集会』に参加した。心に咲く花会のチューリップ担当である彦田かな子さんが、『私と私の家族のカフェとがん教育の活動報告』でポスター発表をされた。ここ数年作り手の技術も上がり、きれいに整った状態で印刷されたポスターが並ぶ中、カラフルでユーモアに溢れた手作り感たっぷりのポスターはすごい存在感を放っていて、まさに「変わり種」。彦田さんの元気溢れる底抜けな明るさや、火が付くほどの情熱もまさに「変わり種」であった!

ポスターの中で、家族(彦田さん、ご主人、16歳・13歳・8歳のお子さん)で取り組んだがん教育の様子が描かれている。「知る」+「思う」=「生きる」と大きく書かれていて、特に子供たちが積極的にお母さんである彦田さんのがんについて学び、今を生きる力に変えていることに『がん教育』の真髄を感じさせてもらった。そして彦田さんは力強く、何度も何度も「子どもをなめちゃいけない!大人なんかよりもすごいんだから!」と伝え、私を含め多くの人がそのパワーに引き込まれていた。

子どもであるとか、大人であるとかに関わらず、思いもよらない苦難に出会った時、

「知る」→正しい情報を得て、理解する

「思う」→それに対する自分の思い、価値観を確認する

「生きる」→道筋を見つけながら、今を生きる

は自分への信頼と、力を取り戻すきっかけを与えてくれる。がん教育は子どものためだけのものではなく、がんと共に生きる私たちにも必要であると改めて感じさせて頂いた。なぜ命を大事にするのかを考えた時に、どうして「わたし」という存在が大事なのだろうという問いと重なった。それは「出会う出来事」も「思うこと」もその人それぞれ違い、「あの花が好き」や「~な風に感じる」、「ピーマンが嫌い」など様々な要素を組み合わせたら、「わたし」という存在が唯一無二であるからだと思った。「あの時、あの言葉をあの人にかけた」自分の存在も、「あの時、私にあの言葉をかけてくれた」その人の存在も本当にかけがえのないものだと実感することが、私の生きる意味なのかもしれない―――。

 

彦田さんの落とした「変わり種」から、私の思考は飛んでいった―――(笑)

 

樋野先生から出されていた宿題「変わり者vs変わり種」その違いを述べよ!の私の答えは、「変わり者」はすでに完結していて、変化の可能性を持たない。「変わり種」は変化の可能性を無限大に含む。「変わり種、その可能性は未知数」。

智恵美写真

ひまわり担当:斉藤智恵美