「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第44回『一億本の向日葵』~探求し続けられるものとの出会い~

第44回『一億本の向日葵』

~探求し続けられるものとの出会い~

「がん哲学」に出会い約二年半、メディカル・カフェを始めて丸二年が経ちました。がん哲学や樋野興夫先生に出会ったたくさんの方が、自分の気持ちや考え方を少しずつ変えて、人生を変化さているのを感じています。私自身も乳がんの罹患に対し、「このがんとの出会いは、人生にどんな投げかけをしているんだろう?」と、ああだ、こうだと考えるのが好きでしたが、がん哲学と出会い、樋野先生との出会いで、それがより実践的に、具体的なものに変化しました。メディカル・カフェの場は、共に感じ、共に考え、自らの力を取り戻していく実践の場所です。そして、カフェを主宰する立場になり学んだことは、がんからの投げかけは“ to do ”ではなく、“ to be ”であることでした。私は、自分の中に明るい自分もいれば、暗い自分もいます。頼もしい自分もいれば、頼りない自分もいます。いい人であったり、嫌な人であったりします。そういった色々な自分の姿を掴みながら、“ to be ”を問うていく作業をしています。樋野先生が、『アルプスの少女ハイジ』や『いぬのおまわりさん』を例に出して、お話をして下さいますが、それは彼らの“ to be = 在り方”に大きな学びあるからだと思います。そして、その学びには決して終わりはなく、人生を終えるその日まで続きます。どんなに安定した代わり映えしない日々であったとしても、全く同じ日はありません。一日一日の在り方や選択が、きっと人生に大きな変化をもたらすのだと感じています。

 どこかで人生には良い答えではなく、良い問いを持つことが大切だと聞きましたが、がん哲学は「答え探し」の場ではなく、「大事な問い」探しの場です。そして、「大事な問い」は誰も代わりには見つけてくれませんので、受け身の姿勢ではいられないのです。だからこそ、次への一歩の礎になるのだと思います。そういった場作りに携われることは、私にとってもとても大きなものです。探求し続けられるものとの出会いは、がん哲学との出会いでした。

樋野先生がボソボソと小さな声で語られる“言葉の処方箋”には、ノリのいい音楽のような気持ちを高揚させる要素はありません。しかし、そこには見たり、触れたりできなくても、種火となるような何かが確かにあるようには感じます。そして、どこまでも学び続け、自由であり続ける“樋野興夫”先生の姿があります。きっとその姿に多くの人は惹きつけられるのではないかな・・・と私は思っています。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美