「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第49回『一億本の向日葵』 ~蒔かれた種に水を与える~

第49回『一億本の向日葵』

~蒔かれた種に水を与える~

8月11日㈰の山の日に、「心に咲く花」会1周年・松本がん哲学みずたまカフェ2周年記念ドキュメンタリー映画『がんと生きる 言葉の処方箋』上映会&シンポジウムを開催致しました。県内外、遠くは東京、千葉、群馬、三重県滋賀県静岡県とたくさんの方が参加して下さいました。1年前の8月11日に、樋野先生の一声で「心に咲く花」会は設立致しました。「心に咲く花=個性を引き出す」という言葉に引っ張られるように歩んできた1年間。昨年の8月11日に、樋野先生の手により大切な種が蒔かれていたことを実感し、今年もまた大切な種が蒔かれたのだと実感する1日でした。

その日の早朝、私は映画上映会後の樋野先生と野澤監督とのトークショーの流れ、午後のシンポジウムの流れをイメージしながら、大好きな曲、槇原敬之さんの「僕が一番欲しかったもの」を聴いていました。♪~僕のあげたもので たくさんの ひとが幸せそうに 笑っていて それを見た時の気持ちが 僕の探していたものだと 分かった~♪この歌は自分が欲しいものを、それをもっと必要としている人に与えることで得られるものについて描かれています。この歌を聴いていると、昨日秋田、今日長野と、日々休みなく全国へ“暇気な風貌”を携えて駆け回り、言葉の処方箋を届け続けている樋野先生の姿や、映画撮影中にヒイヒイ言いながら私の息子と追いかけっこやおんぶをする野澤監督の姿、これまでたくさんお世話になっているがん哲学を通して出会った方々、このイベントのために我こそは!と有志で集まってくれたスタッフの無邪気な笑顔、毎月カフェに合わせて体調を整えて参加して下さるがんと生きる方の姿が、次々と頭の中を巡りました。そして、それと同時に、何とも言えない感謝の気持ちと涙が溢れてきました。

「そうだ。この一年、私はたくさんの笑顔に出会い、支えられてきたんだ。そこからいっぱい力をもらっていたんだ。」

私の周りには、たくさんの笑顔の花が咲いていたのです。この日も映画の中、映画上映の会場で、シンポジウムで、たくさんの笑顔の花が咲いていました。「楽しかった。来て良かった。ありがとう。」私はたくさんのギフトを頂いていました。

 「心の咲く花」って何だろう?「個性を引き出す」ってどういうことだろう?と考え歩き続けた日々そのものが、蒔かれた種に水を与えることでした。そして、自分の情熱を押し込めることなく注げるものがあったことは、私にとって最大の恵みだったのだと思います。映画上映会やシンポジウムなど、同じ想いを共有した空間・場に発生する独特のエネルギー。これをどうすれば、それぞれの生活の場も持ち帰って頂けるだろうと思い、会の最後に樋野先生の言葉の処方箋を皆さんで声に出して言ってみました。いくつもある樋野先生の言葉の処方箋の中で、一番覚えやすく、でもギュッと縮こまった気持ちをフワっと軽くする大好きなあの言葉。

「ほっとけ ほっとけ 気にするな」

上野のリレーフォーライフにて

「ほっとけ ほっとけ 気にするにゃ」

それぞれの人に蒔かれた種、持ち帰った種が来年今頃どのように成長しているのか、今から楽しみです。ご参加下さった皆さま、本当にありがとうございました。また、皆さまの笑顔に会える日を楽しみに、松本がん哲学みずたまカフェでお待ちしております。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美