「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第21回『一億本の向日葵』 ~めぐりめぐって~

第21回『一億本の向日葵』

~めぐりめぐって~

皆さまの日々の中にも“良き思い出”となる出来事が、たくさん散りばめられていると思います。時々、樋野先生から「人生の良き思い出ですね。」とメッセージを頂きますが、私は以前、“良き思い出”と聞いたら、何となく輝かしく、華やいだ出来事を想像していました。何かに感動したり、家族や友人と楽しい時間を過ごしたり、美しい景色を見たり、そんな時には、「思い出に残るだろうな。」と思ったりします。しかし、ここ最近は“良き思い出”の中には、その最中には決して肯定的に受け取ることができなかった出来事さえ、含まれている。そんな風に思うようになりました。1月26日は、息子が通う保育園の「お楽しみ会」という発表会があり、年長クラスの母たちには、“保護者発表”という恒例の大役が用意されていました。正直なところ、重荷のように感じているところもあり、これを大成功に導くには、内容の企画から、練習時間の確保と、ハードルをいくつか越えていく必要がありました。「そんなのできない」、「仕事で練習に参加できるだろうか」などの不安を抱えながらも、「子どもたちと一緒にステージからの景色を見よう!」を合言葉に母たちは頑張りました。それと並行して、もちろん子どもたちも練習を重ねる日々。コマ回し発表をする予定の息子は、運動会の竹馬の時のように「コマできないから、お楽しみ会行かない!」なんで駄々をこねる日もありました。迎えた当日、息子も私ももちろん失敗したくありませんが、失敗も含めて良き思い出!そんな風に思え、合言葉通り、子どもたちと一緒にステージからの景色を全身で感じることができました。ステージに立った時だけが思い出に残るのではなく、それまでの楽しかったこと、きつかったこと、それを含めて全てが思い出となっていく。“良き思い出”とはそういった深さがあるのだと知りました。ちなみに母たちは、アイドルグループ“ももいろクローバーZ”の「ココナツ」という曲のダンスを、重い体に魂を込めて踊り、本気の和太鼓を披露しましたが、私の母からは、「すごかったけど、お母さんたちの息が切れちゃってるし、転びそうで、後半は見てるのが辛かった」と感想をもらいました・・(笑)

それも良き思い出ですね(笑)

 今日を生きる中で感じる不安や困難さ。それもいつの日かめぐりめぐって、“良き思い出”に彩りを添えてくれるかもしれない。それは生きる希望の一つになる。樋野先生が何気なく投げかけて下さる言葉に、日々大切なことを気付かせて頂いています。

 

ひまわり🌻齋藤智恵美