「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第23『一億本の向日葵』 ~生きる希望のありか~

第23『一億本の向日葵』

~生きる希望のありか~

 

がんという存在とお付き合いを始めてから、“希望”“生きる希望”という言葉が耳にとまるようになりました。それまでも色んなところで“希望”という言葉と出会っていたはずですが、“希望”って何だろう・・そんな風に考えるようになりました。きっと皆さんも一度は“希望”について考え、口にしたことがあるのではないでしょうか。または誰かから「希望を持って」と声をかけられたことのある人もいらっしゃると思います。

 

「がん哲学」に出会った時、樋野先生の「ことばの処方箋」や著書に出会った時、私の“希望”という言葉に対する靄が静かに晴れていくのを感じました。希望は状況や結果によらず、追いかけるものでも、外側に見つけるものでもなく、“自分の命より大切な何か”を意識した時に、内側から湧き上がるもの。そんな風に腑に落ちた瞬間でした。樋野先生の著書『楕円形のこころ~がん哲学エッセンス~』の中で、「がん哲学外来の使命」について、

  • 悩みを解消する――一緒に心の痛みを緩和する手立てを探る
  • 人生の意味を確認する――ありのままの自分を認め、怖れることなく「何のために生きるのか」という根源的な問いに向き合う
  • 自分以外に目を向ける――「自分のいのちよりも大切なものがある」自分にしかできない役割や使命を見つける
  • 顔つきを変える――苦しんでいる人が笑えば、周りの人も慰められる。と語られています。

内側から湧き上がる“生きる希望”を感じるまでには、飛び越えることのできない過程があるように思います。抱える痛みを受け入れ、ありのままの自分を認めることに、自分の心は耐えられるだろうか・・。そんな不安を感じる時に、一緒に心の痛みを感じ、手立てを探ってくれる人、ありのままの自分を受け入れてくれる、悲しみも喜びも表現できる場所。役割や使命のヒントをくれる仲間。それぞれの存在があったら、その過程をゆっくりとでも歩んで行けるのではないでしょうか。一つ一つ実感を持って掴んできた“生きる希望”は、きっとやさしさと力強さを持って、周囲の人をも照らす明かりになると信じています。そして、今、私もたくさんの方に見守られながら、その過程をゆっくりと歩んでいます。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美