「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第42回『一億本の向日葵』~笑顔の価値~

第42回『一億本の向日葵』

~笑顔の価値~

「笑顔」はとても身近な言葉です。コミュニケーションの入り口として、多くの人が「笑顔」を活用していると思いますし、もちろん私もよほどのことがない限り、笑顔でご挨拶をさせて頂いています。お互いに気持ちよく話ができ、コミュニケーションもスムーズです。ファーストフード店のテレビコマーシャルで、「スマイルは0円」というようなキャッチフレーズがありましたが、それほどまでに笑顔は私たちにとって大きな役割があるようです。コミュニケーションに活用される笑顔とは別に、私たちは笑顔になることがあります。それは、嬉しいこと、楽しいこと、かわいいもの、興味を惹かれるものなど、自分の「快」に接した時に現れる笑顔です。これこそ“屈託のない”と表現される笑顔なのだと思います。内容自体には興味のないお話だったとしても、話している人があまりにも楽しそうな表情・笑顔で話していたら、その喜びが伝わってきて、こちらも何だか嬉しくなります。「もらい笑い」がそのいい例です。樋野先生ががん哲学についてお話される時、そこには樋野先生の探求心や情熱、喜びがたくさん詰められており、それがこちらにも伝わってきます。だからこそ樋野先生の”チャウチャウ犬のような“表情は伝播し、周りの人を巻き込んでいくのだと思います。

 「笑顔の価値」。私の笑顔の価値はどうでしょう。皆さんの笑顔の価値はどこにあるのでしょうか。 「私からあなたへのプレゼント=誰かを安心させる為の笑顔」はきっと皆さんの日常の中に溢れていると思います。心遣いという優しさがたくさんあります。では、「私から私へ、そしてあなたへのプレゼント=自分の中から溢れだす喜びの笑顔」は・・・?喜びで溢れる笑顔が、大切な人へのプレゼントになるとしたら、その笑顔の価値は計り知れません。自分の笑顔の源になることが、周囲の人たちの笑顔の源にもなり、その笑顔が連鎖していくとしたら、一人一人の喜びや笑顔には大きな大きな価値があると思うのです。ガタガタのジャリ道の中から、きれいなビー玉を探すように、がんと共に生きる中に自分の喜びとなるものを見つけること、人生を「いばらの道にもかかわらず宴会」にする努力の積み重ねは、自分にしかできない大切なお仕事なのではないかと思います。人は体の力を失っていっても、誰かの力になりたい、誰かの笑顔を見たいと願うものだと思います。それが人間の根源的な欲求かもしれないと私は思います。

ひまわり担当🌻齋藤智恵美