「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第189回「心に咲く花会」 さまざまな局面で行動を決断 〜 心の支え、原動力 〜

2022年3月24日 月刊誌の取材撮影であった。 【新型コロナウイルスの蔓延により、突如として一変したこれまでの生活。 会いたい人になかなか会えない、 思うように外出できない。 人生の大きな楽しみが長期的に制限されるなかで、ややもすれば気持ちが暗い方向へと向かってしまうかたも多いといいます。 しかし、そんな状況のなかでも少し視点を変え、― 「大切にしていきたいこととは何なのか」、「どうすれば気持ちが切り替えられるのだろうか」、― など読者のかたが自身の心と対話し、今の日々の中での小さな幸せに気づき、心穏やかに過ごす助けとなるようなページにしたいと思っております。】とのことであった。

 

内容は【コロナ禍が長引き、がんを始め、持病に苦しむ方々はもちろんのこと、不安なお気持ちで過ごされている方が大変多くいらっしゃいます。 樋野先生の「悩みや不安は“解決”することはできなくても、“解消”することはできる」、「日本はボランティア精神後進国」、「暇げな風貌と偉大なおせっかいを心がけている」といったお言葉は、とても考えさせられるものでした。 いつ、どこで誰が感染し、最悪は死に至るかもわからない状況下ですが、このタイミングだからこそ 樋野先生のお言葉を誌面からも読者の方にお届けしたく、―】との心温まるコメントを頂いた。

 

質問は【心に浮かぶ毎日の「小さな幸せ」とは? 何をしている時、どこにいる時、何を考えている時に幸せな気持ちに満たされるでしょうか。 ― それぞれの受け止め方をお聞かせください。 先生が人生のさまざまな局面で行動を決断されるときの心の支え、原動力は何か。 がん哲学外来への思い、コロナ禍での心の持ちよう、教育現場に携わる意義といったことを、 ― お聞かせ願えれば幸いです。】 などなどであった。また、「大切にされているご本、お持ちいただければ幸いです。」との事前の依頼があったので、2007年から毎月行っている読書会で使用している新渡戸稲造(1862-1933) 著『武士道』(矢内原忠雄;1893-1961 訳;岩波文庫」と内村鑑三(1861-1930) 著『代表的日本人』(鈴木範久;1935- 訳;岩波文庫)を持参した。 大変有意義な貴重な取材撮影の時となった。 編集者の真摯な姿勢には感激した。 掲載が楽しみである。

第188回「心に咲く花会」 教育のあり方 〜 友によって研磨される 〜

筆者が理事長を務める恵泉女学園の大学の卒業式(2022年3月11日;多摩キャンパス)に続いて、2022年3月16日は、高校(世田谷区の経堂)の第74回卒業式に赴いた。 在校生代表の「送別のことば」、卒業生代表の「感謝のことば」の真摯な対応には、大いに感動した。 まさに、「鉄は鉄にもって研磨する。人はその友によって研磨される」(箴言27章17節)を実感する貴重な日となった。 そして、筆者は、第74回卒業生感謝会で学生、保護者に向けて、挨拶の機会が与えられた。

 

恵泉女学園創立者河井道(1877-1953)は、恵泉女学園が創立(1929年) 10周年を迎えた1939年、英文”My Lantern"を著し、のちにそれが『わたしのランターン』として和訳されている。 「燃え続けていくように、わたしはそれのみを願っている」と記述している。 『種を蒔く人になりなさい』の実践であろう。 「大地を潤し、芽を出させ、生い茂らせ 種蒔く人には種を与え ― わたしが与えた使命を必ず果たす。」(イザヤ書55章10節〜11節)である。

 

その後、偶然にも雑誌社から、インタビューの依頼があった。『新型コロナウイルスの蔓延により、突如として一変したこれまでの生活。 会いたい人になかなか会えない、思うように外出できない。 人生の大きな楽しみが長期的に制限されるなかで、ややもすれば気持ちが暗い方向へと向かってしまうかたも多いといいます。しかし、そんな状況のなかでも少し視点を変え、「自分にとっての幸せとは何なのか」、「大切にしていきたいこととは何なのか」、「どうすれば気持ちが切り替えられるのだろうか」、「自分が暮らすこの場所での他者とのつながりとは?」など読者のかたが自身の心と対話し、今の日々の中での小さな幸せに気づき、心穏やかに過ごす助けとなるようなページにしたいと思っております。』とのことである。 大いに、感激した。 不思議な繋がりである。

 

夕方には、映画監督とスタッフの方との面談が企画された。 ドキュメンタリー映画新渡戸稲造(1862-1933)生誕160周年記念 〜 教育のあり方 〜』の製作を考えたいとのことである。 混迷する今の時代のタイムリーなテーマとなろう!

第187回「心に咲く花会」 「燃え続けていく」 〜 種を蒔き、開拓せよ 〜

2022年3月11日は、筆者が理事長を務める恵泉女学園の大学(多摩キャンパス)の卒業式、学位授与式に赴いた。 東久留米駅―>秋津駅―>新秋津駅―>府中本町駅―>稲田堤駅―>京王稲田堤駅―>京王多摩センター駅の『電車の旅』であった。 それからスクールバスで、大学(多摩キャンパス)に到着した。 午前は、人文学部(日本語日本文化学科・英語コミュニケーション学科)卒業式、大学院人文学研究科学位授与式であった。 筆者は、式後、保証人(保護者)に向けて、挨拶の機会が与えられた。 午後は、人間社会学部(国際社会学科・現代社会学科・社会園芸学科)卒業式、大学院平和学研究科学位授与式であった。 ともに、筆者は、式後、保証人(保護者)に向けて、挨拶の機会が与えられた。

 

恵泉女学園創立者河井道(1877-1953)は、恵泉女学園が創立(1929年) 10周年を迎えた1939年、英文”My Lantern"を著し、のちにそれが『わたしのランターン』として和訳されている。 「恵泉の建学の精神や教育、経営の理念を支える力強いバックボーン」となっている。 河井道は自著『わたしのランターン』の終わりに「ここまで、わたしは、私のランターンをかかげてきた。 時がくると、それは別の手へとひき継がれて、さらに先へと運ばれていくであろう。 私たちの魂の「太陽」が、この世界の面から、うれいと闇の跡をひとひらも残さず追いはらうまで、このランターンが、芯を切りととのえられ、燃え続けていくように、わたしはそれのみを願っている」と記述している。

 

女子教育に 大いなる理解を示した新渡戸稲造(1862-1933)(東京女子大学 初代学長)が、河井道(恵泉女学園 創立者)、津田梅子(1864―1929; 女子英學塾 創立者)、安井てつ(1870-1945;東京女子大学 第2代学長)を 援護した三人に共通するのは「洗練された自尊心」の人格像で、『種を蒔く人になりなさい』の実践であろう。 まさに、「あなたがたは正義の種を蒔き、誠実の実を刈り入れよ、あなたがたは耕地を開拓せよ。」(ホセア書10章12節)である。

第186回「心に咲く花会」 先人たちの知恵 〜 内村鑑三(1861-1930) & 新渡戸稲造(1862-1933) 〜

2022年3月5日は、長野県長野市での講演会『先人たちの知恵 〜 新渡戸稲造生誕160周年 〜』(長野教会に於いって;添付)に赴いた。 新幹線で長野駅に到着したら『軽井沢がん哲学外来カフェ』を主催されている宮澤豊 牧師が迎に来て頂き車で会場に向かった。 多数の質問が寄せられ、大変有意義な貴重な時であった。 筆者が理事長を務める恵泉女学園の卒業生も出席されていた。 大いに感動した。 懇談会で『千曲川Medical外来・カフェ』開設が決定された。 皆様の「速効性と英断」には、ただただ感服した。 長野駅まで車で送って頂いた中村美幸 氏からは「素晴らしいお話を聴かせていただきありがとうございました!『千曲川Medical外来・カフェ』開設のお手伝い、私でもお茶汲みくらいならできそうなので喜んで」との心温まるメールを頂いた。 新幹線の窓から見る軽井沢のイルミネーションは、大変綺麗であった。

 

2018年6月7日 当時 信州大学医学部脳外科教授で、国際会議『The 20th Academia Eurasiana Neurochirurgica』の会長された本郷一博 先生の依頼で特別講演「Cancer Philosophy & Cancer Philosophy Clinic 〜“having a disease but not a sick person”〜」(軽井沢プリンスホテルに於いて)の機会が与えられたことが、今回鮮明に想い出された。 内村鑑三の『プロの為さざること5箇条』(添付)を海外の脳外科医に英語で紹介したものである。

 

1) Professionals do not prey on others’weaknesses.
「プロは人をその弱きに乗じて苦しめず」
2) Professionals do not insist on pay back.
「プロは人に悪意を帰せず」
3) Professionals do not count on the mercy of others.
「プロは人の劣情に訴えて事を為さず」
4) Professionals do not disclose the secret of a friend.
「プロは友人の秘密を公にせず」
5) Professionals do not compete for profit.
「プロは人と利を争わず」


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第185回「心に咲く花会」 言葉を反芻する 〜 パワー充電 〜

2022年2月24日 埼玉県川越市の『川越のぞみ教会』での『がん哲学外来@川越のぞみカフェ開設6周年記念シンポジウム』で、講演『コロナ時代における「がん哲学」』(ハイブリッド:Zoom & 対面)の機会が与えられた(添付)。 講演後は、4組の個人面談を行った。 西岡義行 牧師・西岡まり子 牧師夫人のZoom、スライド準備など丁寧な おもてなしには、ただただ感謝である。 また、司会を担当された児島康夫 氏とスタッフの真摯な働きには大いに感動した。

 

早速、『本日は、とても意義深い記念シンポジウムとなり、こころから感謝します。―― 先生が語ってくださる言葉を反芻する中で、じわ~とその意味が浸みてくることを感じています。 「言葉の処方箋」がどのようなことか、そしてさらに、言葉の周りに一人一人の貴重な経験と響き合って、「抽象的で、理解するのに時間がかかる」とされる「言葉」の周りに豊かな経験の一つ一つがこだまする、そんなカフェの素敵な時間が過ごせたことが、とても嬉しく思います。』と、また、千葉県の『がん哲学外来あびこカフェ』代表:中野綾子 氏からは、「今週は2回も先生のお話を伺えて、パワー充電できました。 ありがとうございました。」と、さらに『がん哲学外来さいわいカフェ in 茨城・筑西』代表:海老澤規子 氏からは、「川越のぞみカフェでの、貴重なご講演をありがとうございました。 クリスマスローズのチャウチャウ写真を使用下さいまして先生、まめな配慮を感謝いたします。」との心温まるメールを頂いた。 丁度、朝、海老澤規子 氏から『チャウチャウ犬の絵葉書』が届いていた(添付)。 今回のシンポジウムは、大変有意義な貴重な時となった。


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第184回「心に咲く花会」 「訪れる人を 温かく迎い入れる」〜 「他人へのおもいやり」〜

2022年2月19日(土)午前中、東急池上線の「雪が谷大塚駅」で下車し、大田区立調布大塚小学校校長の玉野麻衣 先生の招きで、6年生対象授業『自分らしを失わないために大切なこと』に赴いた(添付)。 小学生の熱心な聴講の姿勢、真摯な質問には、大いに感動した。 その後、教職員、保護者向けの講演(Zoom参加)を行った。 大変有意義な時であった。 思えば、数年前に東急池上線沿いにある洗足池の勝海舟 夫妻(勝海舟:1823-1899、民子:1821-1905)の墓に行ったことが鮮明に蘇ってきた。 母を亡くして 悩んでいるクララ・ホイットニー(Clara A. N. Whitney、1860-1936)に対して、勝海舟の奥さんの言葉『悲しい時には 私達の所へいらっしゃい、一緒に泣きましょう、そしてあなたが 仕合せな時には 一緒に笑いましょう。さあ勇気をお出しなさい、——これから先の長い年月のことは考えず、今日という日以外には 日がないと思って ただ毎日をお過ごしなさい』は、「訪れる人を 温かく迎い入れる」原点でもあり、筆者の『がん哲学外来』の心得となった。 クララは、教師として1875年に来日した父と一緒に5年間日本で暮らし、1880年アメリカへ帰国。 1882年に再来日し、1886年 勝海舟の息子:梅太郎(1864-1925)と結婚した。 1900年 子供達と帰国した。 クララの日記は1875年日本に到着から始まっている。

 

大田区立調布大塚小学校の校門に、友納靖史 先生(常盤台バプテスト教会牧師、常盤台めぐみ幼稚園 理事長・園長)が、車で迎えに来たくださり、常盤台バプテスト教会での講演に向かった(添付)。 小学校の授業と同じスライドを使用した(下記)。 病理学者である筆者は、『人間の身体と 臓器、組織、細胞の役割分担と お互いの非連続性の中の連続性、そして、傷害時における全体的な「いたわり」の理解は、人間の在り方への深い洞察へと誘う』と語った。 「他人へのおもいやり」の実践でもあろう。

 

① 自分の力が人の役に立つと思う時は進んでやれ
② 人の欠点を指摘する要はない、 人のあやまちは語るには足らぬ
③ 理由があっても腹を立てぬこそ非凡の人
④ 感謝は優しき声に表れる
⑤ 心がけにより逆境も順境とされる


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第183回「心に咲く花会」 「人生邂逅」〜 勇気づけ、励まされる 〜

2022年2月11日『樋野興夫先生講演会・パネルデイスカッション医療の隙間を埋める〜がん哲学外来とは?〜』【主催:コホミン(我孫子市湖北地区公民館)、共催:がん哲学外来あびこカフェ(代表:中野綾子 氏)】(添付)に赴いた。 第一部は、中野綾子 氏の司会で、下記のインタビュー形式の講演であった。

 

① 樋野先生のふるさと紹介
② がん哲学について
③ がん哲学外来について
④ 言葉の処方箋いくつかご紹介
⑤ 先生の著書ご紹介

 

筆者の故郷(島根県出雲大社鵜峠)は無医村であり(添付)、幼年期、熱を出しては母に背負われて、峠のトンネルを通って、隣の村(鷺浦)の診療所に行った体験が、今でも脳裏に焼き付いている。 筆者は、人生3歳にして医者になろうと思ったようである。 思えば筆者の人生は、小さな村での少年時代の原風景、学生時代の読書遍歴『内村鑑三(1861-1930)・新渡戸稲造(1862-1933)・南原繁(1889-1974)・矢内原忠雄(1893-1961)』、癌研での「病理学の出会い:菅野晴夫先生(1925-2016)」、アメリカでの「学者の風貌との出会い:Knudson博士(1922-2016)」と「人生邂逅」の「非連続性の連続性」であった。 小学校の卒業式の来賓の挨拶「少年よ、大志を抱け」(1887年札幌農学校のクラーク博士:1826-1886)の言葉を強烈に覚えている。 筆者の人生の起点であると言っても過言でなかろう。 英文で書かれた『武士道』(新渡戸稲造)と『代表的日本人』(内村鑑三)は、若き日からの座右の書である。 悩める時に、いかに勇気づけ、励まされたことか。

 

医師になり、すぐ、癌研究会癌研究所の病理部に入った。 当時の癌研究所所長であった菅野晴夫 先生は、南原繁が東大総長時代の東大医学部の学生であり、菅野晴夫 先生から、南原繁の風貌、人となりを直接うかがうことが出来た。 さらに、菅野晴夫先生の恩師である日本国の誇る病理学者:吉田富三(1903-1973)との出会いに繋がった。 吉田富三は日本国を代表する癌病理学者であり、菅野晴夫先生の下で、2003年、吉田富三生誕100周年記念事業を行う機会が与えられた。 必然的に『がん哲学』の提唱へと導かれた。 そして、『陣営の外=がん哲学外来』(添付)へと展開した。 『がん哲学』とは、南原繁の政治哲学と、元癌研所長で東大教授であった吉田富三のがん学をドッキングさせたもので、『がん哲学=生物学の法則+人間学の法則』である。 『がん哲学外来』は、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がん細胞の発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする病理学者の出会いの場でもある。 筆者が『がん哲学外来』で語るのは、これまで学んできた先達の言葉である。 まさに『言葉の処方箋』である。

 

第2部のパネルディカッション、司会:田中玲子 氏の司会で、パネラーは、福原幸子 氏(柏がん哲学外来)、森尚子 氏(目白カフェ代表)、藤原琢哉 氏(カフェに通う方代表)であった。下記の思いを語られた。 真摯な姿には、大いに感動した。

自己紹介(がん哲学との出会い)
活動の様子(カフェに来られた方の変化の様子)
カフェとは一言でいうとどんな場所?
好きな言葉の処方箋
今後の夢

 

講演後、筆者は、個人面談3組(8名)を行なった。 早速、「今日の我孫子講演会に参加させていただきました。 樋野先生と司会進行の中野さんのパワフルな素晴らしい掛け合いに感動しました。 またパネルディスカッションも勉強になりましたし、励まされました。 ありがとうございました!」との心温まる励ましのメールを頂いた。 涙無くして語れない! 大変、有意義な貴重な『我孫子の旅』であった。


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