「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第182回「心に咲く花会」 「寛容と信念を備えた具眼の士」 〜 自らの強みを基盤とする 〜

今回は、第182回目である。 今年、『心に咲く花会』の単行本化が実現したら、新渡戸稲造(1862-1933)生誕160周年記念となろう! 筆者の最初の単著は『われ21世紀の新渡戸とならん』(2003年;イーグレープ)であるが、共著は、『癌遺伝学の夜明け』(2002年;日本学会事務センター)であった。 国立国会図書館にも置かれているとのことである。

 

筆者のアメリカのPhiladelphiaのFox Chase Cancer Center時代の「遺伝性がん研究」の恩師であるKnudson博士(1922-2016)の業績を記念して『癌遺伝学の夜明け〜クヌドソンのTwo-hit Theory』(中川原章・樋野興夫編 2002年)(添付)と『Tumor suppressor genes and the two-hit model of recessive oncogenesis: celebrating Alfred Knudson's 80th birthday.』(Testa J. R.・Hino O.編 2003年)(添付)を出版したことが忘れ得ぬ貴重な想い出である。 Knudson 博士は「寛容と信念を備えた具眼の士」であり、筆者の人生の「Mentor」である。 教育とはまさに「説得ではなく感化」である。 『癌遺伝学の夜明け』は、Dr.Knudson 夫妻を迎えたシンポジウム(添付)の講演記録で 【Two‐hitと遺伝性癌/Alfred・Knudson、 小児腫瘍学から学んだ癌研究/Anna・Meadows、 My mentor/樋野 興夫 etc) 】が記載されている。

 

Knudson 博士が亡くなって、筆者は、ボストン大学で追悼記念講演の機会が与えられた。 内容は『複雑な問題は焦点を絞り単純化する。 自らの強みを基盤とする。 なくてならないものは多くない。 なくていいものに縛られるな。 Red herring = 惑わされるな、相手をその気にさせて、間違った方向に行かせる。気をつけよう』というものであった。 一言でいえば『気にするな、ほっとけ。人が何を言っても、ほっとけ ほっとけ。ということが大切だ』である。 「時代を動かすリーダーの清々しい胆力」の学びであった。 人生邂逅の3大法則は、下記であろう!

 

人生邂逅の3大法則 ~ 良き先生(重心)、良き友(外心)、良き読書(内心) ~


1.広く癌を知っている
2.広く病気を知っている
3.ガラスの向こうに患者を見ている
4.自分のテーマを持って研究している
5.生物学にも興味を持っている


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第181回「心に咲く花会」 「的確で真髄」 〜 「教育と学問」 〜

筆者は、2022年1月27日「全国がんプロ協議会アドバイザー」として、大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻がんプロ事務局主催のオンライン会議2021年度(第3期がんプロ)、全国がんプロ教育合同フォーラム『【テーマ】希少がんの人材育成』に参加の機会が与えれた。 全国がんプロ協議会会長の松浦成昭 先生の質問は、「的確で真髄」があり、また事務局の皆様の「真摯なおもてなし」には、大いに感動した。


本来は、第3期がんプロは、2022年3月終了であったが、文科省は1年延期して、2023年度から新たな「がんプロ」を開始とのことである。 新型コロナウイルス感染の状況で、「コロナ感染症対策」が中心にならざるを得ず、「がん教育」は前面に出し難くなったようである。 第4期「がんプロ」は2023年スタートのようである。 第4期(2023年度)〜)のテーマは「ポストコロナ時代における高度専門人材育成」であろうか ?

 

「がんプロ」の心得の5か条

1) 「高度な専門知識と幅広い教養」の習得
2) 「視野狭窄にならず、複眼の思考を持ち、教養を深め、時代を読む
具眼の士」の種蒔き
3) 「役割意識と使命感」の自覚
4) 「教育の真髄」:「練られた品性と綽々たる余裕」
5) 「学者の風貌」:「考え深げな黙想と真摯な魂と 輝く目」

ではなかろうか !? まさに、「がんプロ」の継続の時代的要請であろう!

 

筆者は、2022年2月11日『医療の隙間を埋める』(添付)と2022年2月12日『苦しみが品性を磨き、その品性が希望を生み出す』(添付)の講演を依頼された。タイムリーなテーマには、ただ感服した。 『「時代を動かすリーダーの清々しい胆力」としての「人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動」と「ビジョン」をつくり出すのは、根本において「教育と学問」のほかにはない』を実感する日々である。


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第180回「心に咲く花会」 迅速な対応 〜 コミュニケーション力 〜

2022年1月20日の第88回「がん哲学外来メデイカル・カフェ@よどばし」(淀橋教会に於いて)が筆者の都合で、延期となった。 大変申し訳ない。「今朝 淀橋教会への準備をしている時 市川先生よりご連絡」あったとの連絡を受けた。 主催者の市川牧子 先生の迅速な対応には、ただただ感謝と大いに感服した。 そして、参加予定の方から、多数の質問が寄せられた。

 

1. がん治療で、副作用のなるべく少ない治療を望んでいますが、どのような治療がありますか。
2. がん治療の時に使われる放射線治療、ホルモン療法それぞれの治療費は1回でどれくらいかかるものでしょうか
3. 急激に痩せると、癌が疑われると言いますが、なぜ癌になるとやせるのですか。
4. 癌というのは、人間の体のどの部分もなりえるのでしょうか。 癌にならない所はないのでしょうか。
5. 癌というのは、動物だけにあり、他の生物にはないのでしょうか。
6. ウイルスというのは、どれくらいの寿命があって、ウイルス自体は太古の昔から存在するのでしょうか。 人間や動物とどちらが古いのでしょう。
7. 日本の病院では、ファシリティ―ドッグの普及がなかなか進んでいないように思います。 原因は何でしょうか。 費用や、犬の訓練に時間がかかったりすることでしょうか。 それとも、社会がなかなかそれを受け入れられないのでしょうか。
8. ファシリティ―ドッグのアメリカでの普及率はどのくらいですか。
9. コロナ感染拡大につながり、子どもたちの生活は一変しました。 先日、山手線の中で乳母車に乗っている、一歳くらいの子もマスクをしていました。 お母さんに聞いてみると、「最初は嫌がりましたが、この頃は小さいながらにつけなくてはと思っているようです。我慢ばかりで、可哀そう」と話しておられました。
10. コロナ第6波となり、高齢者施設や病院など、また面会が出来なくなっているようです。 そして、施設職員や医療従事者の数も限られ、減る可能性のある中、そのような閉ざされた中にいる方々のために、出来る事はどのような事があると思われるでしょう。
11. 看護師さんは、昔は看護婦さんと呼ばれて、女性の職業だったと思います。 やはり、看護の仕事は「母」「女性」の中にある要素が求められるのでしょうか。 それは何ですか。
12. 医者を目指す学生が今の時代身に着けておくべきことは何だと思いますか
13. 少し前にお世話になったかかりつけ医は、問診の時「聞かれたことだけ答えて」とよくぴしゃりと言われました。 ある時別の病院にかかった時の医師は、実に親切に色んな説明をしてくれました。 樋野先生が考えるベストな医師像はありますか
14. コロナの時代を迎えて、社会はかつてとは大きく変わってしまったようにも思えますが、メディカル・カフェの働きも、コロナの時代を迎えて何か変わったところがあるでしょうか。
15. コミュニケーションを取るのが余り得意ではありません。 コミュニケーション力という言葉をよく耳にしますが、コミュニケーション力を高めるためには、どうすればよいと先生は思われますか。
16. 樋野先生は月に何冊も本を読まれていますが選ぶ本のジャンルはなんですか
17. 先生が、小学生から受けた質問で印象に残っているものを教えてください。
18. 先生が以前「今の時代、自分の命が一番大事だと教える。しかし死ななければならないなら死にますということが大事だ」とおっしゃいました。 諸外国では、文化・宗教の違いなどあるかもしれませんが、この辺の所をどう子どもたちに教えているのでしょうか。

 

などなど、「がん、病気・健康、人間関係」について全部で34の真摯な質問には感動した。 次回の「がん哲学外来メデイカル・カフェ@よどばし」で、対面で誠実に答えたいと思う。 『言葉の処方箋』の学びの日々である。

 

第179回「心に咲く花会」 国境を超えて 〜 『はじめに言葉あり』 〜

この度、月刊誌『いのちのことば2』(2022年2月号)が送られて来た。 その中の13ページに常盤台バプテスト教会牧師の友納靖史 先生の『写真日めくり 人生を変える言葉の処方箋 英訳付き』の書評『そっと寄り添う言葉と写真』が掲載されていた。 大いに感激した。

 

【闘病中の方、--- 書店などを隅々まで巡り、思い悩まれた方は多いことでしょう。 既刊『日めくり 人生を変える言葉の処方箋』(いのとのことば社、2019年)も愛用されていますが、この写真日めくり・英訳英付き出版のニュースを聞き、「待っていました!」と心の中で叫んでしまいました。 「全力を尽くして、心の中でそっと心配する Do your best, then keep any worries quietly in your heart.」。 第一日目に掲載された言葉の意味を、著者で医師・樋野興夫氏は勝海舟の言葉と紹介します。 --- 各地で出会う方々の心と魂に処方された氏の言葉からの厳選珠玉集。 人生で思いもよらない病を身に負うことになった方々にどう関わってよいのか、誰もが悩みます。 --- 相手の方を思い浮かべつつ、「何を贈るべきか? まだその時ではないのだろうか?…」と悩む方にも、この一日目の言葉は響きます。--- 病を負う方が日々、心の中に抱える苦悩に寄り添いたいとの願いは、国境を超えて同じす。 既刊『日めくり 人生を変える言葉の処方箋』に励まされた方々の声をお聞きし、英訳版があると海外在住邦人や外国人の家族などにもお届けできるのに…と思っていました。 このたび、美しい自然の風景が加えられ、目にも優しくしみる英訳付き「写真日めくり」の出版は、樋野先生の言葉を使わせて頂くなら、「世界的偉業です」。 --- “そっと”寄り添い、その先にある確かな御言葉の慰めを求める心を呼び覚ます一冊とされることでしょう。】と記述されている。 友納靖史 先生には、ただただ感謝である。 まさに、国境を超えて、『言葉の処方箋』である。

 

2022年1月14日早朝、筆者の新刊『がん細胞から学んだ生き方「ほっとけ 気にするな」のがん哲学』(へるす出版)(添付)の『菅野晴夫 先生(1925-2016)は「30代は人にいわれたことをがむしゃらにやれ、40代で自分の好きなことに専念し、50代で人の面倒をみる、60代になっても自分のことしか考えていないなら恥と思え」』(38,39ページ)を読まれた東中野キングス・ガーデンの奥山寧 氏から、カードが送られて来た(添付)。 大いに感動した。 『はじめに言葉あり』の学びの日々である。


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第178回「心に咲く花会」 『わたしのランターン』 〜 燃え続けていく 〜

2022年1月6日午前中 教職員の恵泉女学園新年礼拝(フェロシップホールに於いて)に出席した。 筆者は、昨年2021年7月1日、新渡戸稲造(1862-1933)から学んだ河井道(1877-1953)が、初代学園長である恵泉女学園の9代目理事長を拝命することになったので、初めての参加であった。『御挨拶』の機会が与えれた。下記を語った。

 

【河井道の『わたしのランターン』の終わりに「ここまで、わたしは、私のランターンをかかげてきた。 時がくると、それは別の手へとひき継がれて、さらに先へと運ばれていくであろう。 私たちの魂の「太陽」が、この世界の面から、うれいと闇の跡をひとひらも残さず追いはらうまで、このランターンが、芯を切りととのえられ、燃え続けていくように、わたしはそれのみを願っている」と記述している。人間は、自分では「希望のない状況」であると思ったとしても、「人生の方からは期待されている存在」であると実感する深い学びの時が与えられています。現代は、「表面的なhappy」vs「内から湧き出るjoy」の違いの考察の時ではないでしょうか!女子教育に 大いなる理解を示した新渡戸稲造東京女子大学 初代学長)が、援護した河井道(恵泉女学園 創立者)は、まさに、『種を蒔く人になりなさい』の実践であります。】、さらに、新渡戸稲造の考え・行動が、集約されている以下の4項目、
(1)賢明な寛容さ (the wise patience)
(2)行動より大切な静思 (contemplation beyond action)
(3)紛争や勝利より大切な理念 (vision beyond conflict and success)
(4)実例と実行 (example and own action)
そして、河井道なら、『コロナ時代の教育』をいかに語られるのであろうか!?
『コロナの時代を生きる5か条』
① 自分の力が人の役に立つと思う時は進んでやれ
② 人の欠点を指摘する要はない、 人のあやまちは語るには足らぬ
③ 理由があっても腹を立てぬこそ非凡の人
④ 感謝は優しき声に表れる
⑤ 心がけにより逆境も順境とされる
を述べた。

本山早苗 校長が『御挨拶』で、筆者の新刊『がん細胞から学んだ生き方「ほっとけ 気にするな」のがん哲学』(へるす出版)(添付)から『菅野晴夫 先生(1925-2016)は「30代は人にいわれたことをがむしゃらにやれ、40代で自分の好きなことに専念し、50代で人の面倒をみる、60代になっても自分のことしか考えていないなら恥と思え」』(38,39ページ)を話され、大いに感動した。 大変、貴重な時であった。


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第177回「心に咲く花会」 人知・思いを超えて 〜 この時の為 〜

2021年も終わりである。 今年も色々な経験の年であった。 2007年から始めている【読書会(内村鑑三『代表的日本人』、新渡戸稲造『武士道』)】、2008年から開始した『がん哲学外来・カフェ』、また『講座、講演会での出会い』などなど、皆様と有意義な、貴重な時を過ごした。 本当に、継続の大切さを実感する年でもあった。 2021年は、『内村鑑三(1861-1930)生誕160周年』であった。 2022年は、『新渡戸稲造(1862-1933)生誕160周年』である。

 

思えば、筆者の故郷は、美しい日本海に面した小さな無医村の出雲市大社町鵜峠である。 現在は、人口は約40名、空き家60%、であろうか!? 既に、小学校、中学校は廃校である。 鵜峠から8キロほど、峠を越えた所に出雲大社がある。 高校時代は、出雲市での下宿生活であった。 大学受験に落ちて、京都の叔母の家で浪人生活を送った。 その叔母も、今年、91歳でご逝去された。 涙無くして語れない! 今は亡き予備校の英語の先生から『南原繁(1889-1974)』について毎日授業で教わった。 その先生が東京大学法学部の学生時代の総長が南原繁である。 そして、南原繁の恩師である『内村鑑三新渡戸稲造』へと繋がった。 不思議な人生の邂逅である。 浪人したのは、「もしかすると この時の為」を実感する日々である。 筆者は、現在、「南原繁研究会」の代表を仰せつかっている。 若き日からの読書習慣は、『内村鑑三新渡戸稲造南原繁矢内原忠雄』の全集の読破の実践ともなった。 『がん哲学外来』で対話の軸にしている『言葉の処方箋』は、『内村鑑三新渡戸稲造南原繁矢内原忠雄』が残した言葉から獲得したものである。 「人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動」(南原繁著の「新渡戸稲造先生」より)、「時代を動かすリーダーの清々しい胆力」、「ビジョンは、人知・思いを超えて進展する」ことを痛感する2021年であった。

 

早速、2022年1月の講演の依頼が届いた(添付)。


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第176回「心に咲く花会」 『雪の万座の旅』〜 清々しい胆力 〜  

2021年12月23日、24日 万座温泉日進舘(群馬県)に於いた(添付)。 23日は、『クリスマス会 &「樋野先生 恵泉女学園理事長御就任祝賀会」』が企画され、筆者は、定番の『おまえに』、『くちなしの花』、『すきま風』、『銀座の恋の物語』を歌った。 早速、「先生の美声にも酔いしれました!」とのニューモア溢れる心癒されるメールを頂いた。 その後、ロビーで、講演『人生の意味を確認する 〜 コロナ時代を生きる哲学 〜』の機会が与えられた(添付)。 東京都、群馬県、長野県からも参加され、ただただ感謝である。

「私は一人の人間に過ぎないが、一人の人間ではある。 何もかもできるわけではないが、何かはできる。 だから、何もかもはできなくても、できることをできないと拒みはしない」』(ヘレン・ケラー)の実践の時でもあった。

 

24日は内村鑑三(1861-1930)生誕160周年記念として、『がん哲学外来カフェ in 嬬恋村 万座温泉』が開催された(添付)。 本当、有意義な時であった。 「次回は来春ですが、樋野先生ご誕生日御祝いと 新渡戸稲造(1862-1933)生誕160周年記念祭ですので どうぞ御参加宜しくお願い致します。」との心温まるメッセージを頂いた。 涙無くして語れない!  「冗談を本気でする胆力」には、感服である。 「時代を動かすリーダーの清々しい胆力」としての「人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動」(南原繁著の「新渡戸稲造先生」より)の文章が思い出される今日この頃である。

 

帰りは、軽井沢を、wifeと散策した(添付)。 軽井沢は、内村鑑三新渡戸稲造のゆかりの地でもあり、筆者にとっては、特別の思いがある。「ビジョン」は人知・思いを超えて進展することを痛感する日々である。 今回の『雪の万座の旅』は、「人生の良き想い出」となった。


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