「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第99回『一億本の向日葵』~久しぶりの再会と緩み~

第99回『一億本の向日葵』

~久しぶりの再会と緩み~

先日7月25日㈯は4か月ぶりに、公共の施設をお借りしての松本がん哲学みずたまカフェを開催致しました。人数制限や距離を保った形での会となりましたが、参加された方々の元気なお姿を拝見できたこと、近況を聞かせて頂けて、とても楽しい時間でした。普段利用している会場は、あがたの森文化会館という古い木造校舎を活用した施設なのですが、エアコンがないということもあり、夏場は別の会場をお借りしています。会場の雰囲気なども、メディカルカフェに作用しているなぁと感じることがあります。木造のお部屋に比べるとコンクリート造の建物は少し緊張感を生みやすいのですが、今回のカフェではそれがとてもいい方に作用しておりました。まさに、緊張が緩み、笑いが生まれるといった形で、最後にはみんなで声を出して笑っていました。「これはメディカルカフェ??」とツッコミを入れたくなるほど、話題はそれてはいたものの、これはこれでいいなぁと思いました。メディカルカフェを開催し始めて、丸3年が経ちましたが、ここにきて「緩むことの大切さ」をとても感じるようになりました。がんと診断を受け、その中の多くの方が自分の人生と向き合う機会を得ていると思います。治療に対しても、生き方に対しても、よく考え、真剣に向き合っていらっしゃいます。とても大切な時期や時間であることは言うまでもないのですが、それがまるでピーンと張りつめた糸のように感じられることもあります。真剣になればなるほど緊張が生まれやすく、余裕がなくなってしまいます。私もどちらかというと「真剣に考えているのだから放っておいてほしい」と緊張の中に身を置くタイプなのですが、そういった時はちょっとやそっとの事では、笑えなくなるという寂しさがありました。人が生きていく中で感じる幸福感は、チャレンジの中での達成感などもありますが、やはり多くは笑いや緩み、リラックスから生まれたものではないかなと思います。

油断してはいけない。特に治療中はそんな風に思ってしまうこともあります。ですが、人は緩むことでできる隙間があるからこそ、生きる活力や喜びを感じ、誰かからの愛情を受け取ることができるような気もします。私も以前はくだらないことで笑うことに苦手意識があったのですが、今はちっちゃなことでも笑える喜びを感じています。そして、そんな自分が愛おしくも思えます。コロナウィルスで緊張感が続いている時だからこそ、意識的に体と心を緩め、もっともっと自分の笑顔の種を拾い集めてほしいなと思います。

インターネットより画像をお借りしました。パンダちゃんの仁王立ち(笑)!

ひまわり&パンダ担当🌻齋藤智恵美