「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第141回「心に咲く花会」 「現在を的確に認識し、未来を志向する」〜 「意志の共鳴」 〜

第141回「心に咲く花会」
「現在を的確に認識し、未来を志向する」〜 「意志の共鳴」 〜

第110回日本病理学会総会(2021年4月22日〜24日、新宿の京王プラザホテルに於いて)に出席した。 今年は、北川昌伸 大会長(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 包括病理学分野 教授)のもと、テーマは、『病理学の挑戦 ― 伝統的学問からインテリジェントパソロジーまで』であった。 大いに勉強になった。「病理学者は生涯書生」・「病理学者は社会の優越者ではない」・「病理学者は自己犠牲が伴う」は、まさに、「病理学者の3ヶ条」であろう。「本質的な人間教育の見直し」は、病理学者の時代的役割であろう! 「現在を的確に認識し、未来を志向する=病理学」を極めること

は、「森を見て木の皮まで見る」ことである、マクロからミクロまでの手順を踏んだ「丁寧な大局観」を獲得する「厳粛な訓練」の場でもある。まさに、日本病理学会総会は、「意志の共鳴」の集いである。

筆者は、2010年 今回と同じ会場で、大会長として第99回日本病理学会総会を開催した。 当時の文章に『「第99回日本病理学会総会(2010年4月27日〜29日)(東京・新宿の京王プラザホテル京王プラザホテル)「広々とした病理学-深くて簡明、重くて軽妙、情熱的で冷静-」が無事終わった。 過去最高の参加人数であったとのことである。 驚きである。『病理の100年を振り返って』(菅野晴夫 先生) の特別企画(添付)、特別講演「科学の一般性、物語の一般性『2.5人称の視点』が拓くものー」(柳田邦男 氏)は、ともに1000人会場が一杯であった。 多くの病理学者に大いなる感銘を与えた。 主催者として感無量であり、涙なくしては語れない! 市民公開シンポ(4月29日)「がん医療-時代は何を求めているか?」(添付)も参加者が大幅に上まわり700人会場を1000人会場に変更した。 霞富士雄 先生『乳がん手術はどんどん小さくなっている』、有井滋樹 先生『肝がんにならない、負けない方法』、立花隆 氏『がんと私』の講演で会場の熱気が、ひしひしと伝わって来た。 パネルデスカッションも素晴らしかった。 筆者は「臨床医と患者・市民」との「懸け橋」として『がん哲学&がん哲学外来』を語った。 現代は、如何なる領域・分野においても、「陣営の外」に出て、境界に立ち、隙間を埋める「懸け橋」が求められているのではなかろうか? 本当の「隙間」は「人間の幅」であり、人間の勇気ある一歩によって、渡れるものと感ずる今日、この頃である。「広々とした病理学」は「悠々と謙虚」を生み「対立的な違いを対称化」し「未来への懸け橋」となることであろう。」とある。 また、『医学界新聞』では、『第99回日本病理学会が4月27-29日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて樋野興夫会長(順大)のもと開催された。 わが国病理学の1世紀の集大成として,「温故創新」と「未来への懸け橋」となる学術集会をめざした今学会では,1200題を超える演題が並んだ。本紙では,肝細胞癌研究の歴史的背景から最近の進歩までを6人の演者が報告した,シンポジウム「肝細胞癌の基礎的研究と病理診断 ― 歴史と最近の進歩」(座長=慶大・坂元享宇氏,帝京大・福里利夫氏)のもようを紹介する。』の記事が掲載されていた。 忘れ得ぬ懐かしい貴重な想い出である。