「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第301回「心に咲く花会」 謙虚で、前に向かって努力する 〜 人生の意義と目的の『静思』 〜

2023年10月26日 ルーテル学院大学での講義『現代生命科学II』に赴いた。 教科書『カラーで学べる病理学』を用いて、第4章『循環障害:血液凝固と血栓、塞栓、虚血と梗塞、浮腫、ショック、高血圧』& 第5章『炎症:炎症とは、炎症の基本病変、急性炎症のしくみ』を音読しながら進めた。 真摯な学生の姿勢には大いに感激した。 大変有意義な学びの時となった。

10月27日は『京都市立病院 緩和ケア勉強会』(主催:京都市立病院 かんわ療法委員会、がん医療連携センター)に向かう(添付)。 筆者は、講演『がん患者が 医療に求める対話とは』の機会が与えれた。

【医療者は患者さん・ご家族に色々な情報を詳しく伝えるだけで 十分だと思っていませんか。 実は患者さん・ご家族は医療者に距離を感じています。 この隙間を『対話』というコミュニケーションでどのように埋めていくのか。 患者さん・ご家族の声を聞き、寄り添いたい医療者は是非、ご参加ください。】と紹介されている。

『病理学』とは、病気の根幹を追求しようとする『the study of the diseased tissues』である。【『広々とした病理学』とは、『病理学には限りがないことをよく知っていて、新しいことにも自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力しているイメージ』】は、筆者の癌研時代の恩師:菅野晴夫 (1925-2016)先生の言葉である。

【『がん病理学』 は『がん』に関しての学問で、『形態』、『起源』、『進展』などを追求する学問分野である。 当然がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。 がん病理学者が『がん』をどの様に考えるかは、とても大切なことである。 なぜなら『がん』に対する概念が世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも時には決定するからである。『がん』の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では人生の意義と目的の『静思』へとも導くものと考える。 これこそ『がん病理学者の社会貢献』である。】と語る。