「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第212回「心に咲く花会」 社会性(ソシアリテイ) 〜 日常の決断や行動 〜

2022年9月日『ピア・カフェ at 三鷹ネットワーク大学』(三鷹市)の講演に赴いた(添付)。【勝海舟の屋敷があった赤坂で、講演に呼ばれた。『母を亡くして 悩んでいるクララに対して、勝海舟の奥さん(たみ)の言葉;「悲しい時には 私達の所へいらっしゃい、一緒に泣きましょう、そしてあなたが 仕合せな時には 一緒に笑いましょう。さあ勇気をお出しなさい、—— これから先の長い年月のことは考えず、今日という日以外には 日がないと思って ただ毎日をお過ごしなさい」は、「訪れる人を 温かく迎い入れる」原点でもあろう。』】、【『がん病理学』 は『がん』に関しての学問で、 『形態』 、 『起源』、 『進展』などを追求する学問分野である。 当然がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。 がん病理学者が『がん』 をどの様に考えるかは、とても大切なことである。 なぜなら『がん』に対する概念が世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも時には決定するからである。『がん』の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では人生の意義と目的の『静思』 へとも導くものと考える。これこそ、『がん病理学者の社会貢献』 である。】、【電子計算機時代だ、宇宙時代だといってみても、人間の身体の出来と、その心情の動きとは、昔も今も変ってはいないのである。 超近代的で合理的といはれる人でも、病気になって、自分の死を考へさせられる時になると、太古の人間にかへる。】、【人間は、ロビンソン・クルーソーの様に孤島にひとり住んでいたのでは、良い人か悪い人かは判らない、人間社会の中に住まわせてみて初めてその性(サガ)が明らかになる。がん細胞もしかり。】などなど 筆者が、何時も学生の授業で、使う言葉を語った。

 

『真理は円形にあらず、楕円形である。一個の中心の周囲に描かるべきものにあらずして、二個の中心の周囲に描かるべきものである。— 人は何事によらず 円満と称して円形を要求するが、天然は 人の要求に応ぜずして 楕円形を採るはふしぎである。— 患難の坩堝(るつぼ)の内に燃え尽くす火に 鍛えられて初めて実得し得るものである。』(内村鑑三:1861-1930)も語った。 早速、【「合わない人を排除しない」という言葉が今の自分には大事な言葉だと感じました。心がけていきたいと思います。」、「貴重なお話しを有難うございます。“寄り添うこと”、“30m後ろから見守る人、”大切なコトバ“を心に留めました。”、“先生は灯台”】などなど多数の心温まる励ましのメッセージを頂いた。 大変有意義な貴重な時であった。 まさに、【『社会をよく見て、『がん』から学んだものを生かす = 社会性(ソシアリテイ)(新渡戸稲造:1862-1933)の精神)】の実践である。


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