「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第285回「心に咲く花会」 根本に眼を据える 〜 内発的で自律的である 〜

2023年8月18日 筆者は、病理組織診断の業務を行った。『病理学』とは、病気の根幹を追求しようとする『the study of the diseased tissues』である。

【『広々とした病理学』とは、『病理学には 限りがないことをよく知っていて、新しいことにも 自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力しているイメージ』】は、筆者が、癌研時代の恩師 菅野晴夫(1925-2016)先生から学んだものである(添付)。

【『初期の癌化細胞は いまだ『行く先を知らない』で過酷な環境にあり、尺取虫のごとく 着実に進展していくものが生き残る。 外界依存性(アンテナ型)と 外界非依存性(羅針盤型)の混在である。 アンテナ型は 表面に受容器は良く発連しており、豊富な情報量を誇るが 非自律的であり、外発的である。 内発的で自律的である羅針盤型とは 質的に大きく違う。』

【『本は一つであり、末は多岐に分かれる。 末梢の一つ一つを追いかけていっても、本を見失えばいたずらに疲れるばかり、根本に眼を据える必要がある』】筆者は、若き日から病理医として顕微鏡で細胞を見ながら、『自分はどういう人間か』を何時も問うている。 『筆者の相関図』はここにあろう(添付)。

『学は 之を励ますに 高貴なる意志の感動を要す。 功名を目的として、利益の刺激に依りて 智能永久に発育し得べきものにあらず。 我が帝国大学の衰凋は 其中に高遠な理想の活動せざるに存す』(1898年、内村鑑三;1861-1930)は、教育の現況を展望すれば深く心にしみる。

【まさに世の『改革者は 自らは改革されないで 改革された社会に住むことを望む。 よって真の改革は何一つ出てこない』。 いつの時代も 真の改革者は『正統なるが故にアウトサイダー』である。 故に『具眼の士』が大切になってくる。】

筆者の『癌病理学者としての心得』はここにある。 本当に日々修練である。