「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第147回「心に咲く花会」 「勇敢な行動と無私の人間愛」 〜 「できることをできないと 拒みはしない」 〜

2021年6月6日は、定例の『東久留米がん哲学外来・カフェ』(代表:小林真弓 氏)と『読書会』である。 「継続の大切さ」と「スタッフの胆力」には、感謝である。  この度、『東久留米がん哲学外来・カフェ』では、『心のSpring water(湧き水)』Vol.7が発行された(1ページ目;添付)。  参加者の皆様が 全員寄稿され、担当者:猪口由紀子 氏が、英訳されている(添付)。  まさに、世界への発信である。  ただただ感服である。  2007年から、毎月継続されている読書会は、今回は、新渡戸稲造著『武士道』(矢内原忠雄訳)の第4章「勇・敢為堅忍の精神」である。  音読担当は、今回から『心に咲く花会』HPを担当されることになった 森尚子 氏とのことである。  皆様の真摯な姿を拝見し、下記の2人の人物が、鮮明に蘇ってきた。

 

1人は、ヨハネス・クヌドセン(Johannes Knudsen、1917-1957)である。  「1957年2月10日、神戸港へ向かう貨物船エレン・マースク号(Ellen Maersk)は、航行中、機帆船「高砂丸」が炎上しているのと遭遇。  風速20mを越える強風の中、エレン・マースク号は「高砂丸」乗組員の救助作業に当たる。  機関長として乗り組んでいたクヌドセンは、高砂丸船員を救うべく海中に飛び込み、そのまま波間に没した。」とのことである。  クヌドセンの「勇敢な行動と無私の人間愛」の根拠に感動した。

 

もう1人は、有名なヘレン・アダムス・ケラー(Helen Adams Keller、1880-1968)である。  3重苦(聴力、視力、言葉を失う)を背負いながらも、世界各地を歴訪し教育・福祉に尽くした。  「ヘレン・ケラーは、2歳の時に高熱にかかり、聴力、視力、言葉を失い、話すことさえ出来なくなった。  両親から躾けを受けることの出来ない状態となり、家庭教師として派遣されてきたのが、当時20歳のアン・サリヴァン (1866 -1936) であった。  サリヴァンはその後約50年にも渡って、よき教師として、そして友人として、ヘレンを支えていくことになる」。  ヘレン・ケラーは、3度 (1937、1948、1955) 来日している。  ヘレンとサリヴァンの半生は『The Miracle Worker』(日本語『奇跡の人』)として映画化されている。  英語の『「The Miracle Worker」には「(何かに対して働きかけて)奇跡を起こす人」といった意味があり、本来はサリヴァンのことを指す』とのことである。  ヘレン・ケラーが「人生の眼」を開かれたのは「いのちの言葉」との出会いである。  学びは、『I am only one, but still I am one. I cannot do everything, but still I can do something; And because I cannot do everything I will not refuse to do the something that I can do.「私は一人の人間に過ぎないが、一人の人間ではある。  何もかもできるわけではないが、何かはできる。  だから、何もかもはできなくても、できることをできないと 拒みはしない」』(ヘレン・ケラー)であった。  「人生の不思議な出会いの連続」を実感する日々である。
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第146回「心に咲く花会」 『先人の志を継承する』 〜 普遍的な学びの訓練 〜

2021年5月29日 放送大学 埼玉学習センター での2コマZoom講義(9:50〜11:20、 11:35〜13:05)に赴いた。  「科目名:がん哲学外来 〜 言葉の処方箋 〜、 専門科目:生活と福祉、 担当講師:樋野興夫(順天堂大学名誉教授)、高野みどり(元放送大学客員准教授)」、{【授業内容】:「がん哲学」とは、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がんの発生と成長に 哲学的な意味を見出そうとする医師との 対話から生まれました。  日本人の半分が がんになる時代、好むと好まざるとにかかわらず、多くの人が がんと一緒に生きる方法を 見つけなければなりません。  授業では 教科書の読みあわせと 解説をしつつ、受講者とのディスカッションを中心に 講義をすすめます。  患者さん、患者に寄りそいたいと思う方すべてが対象です。}、{【学生へのメッセージ】:私が若き日から、夜を徹して読書した 「新渡戸稲造内村鑑三」を銘打った「がん哲学外来」が実現したことは、本当に、不思議です。  人知を超えた、特別な働きを肌で感じる 今日この頃です。  授業でのデスカッションには 積極的に参加して下さい。}と 紹介されていた。

 

【授業テーマ】

第1回 「がん哲学」とは(樋野)

第2回 「天寿がん」の時代に向けて(樋野)

第3回 がん哲外来&メディカルカフェの実際(髙野)

第4回 がん体験者からのメッセージ~病気であっても病人ではない~(髙野)

第5回 ゲノム時代と発がんの研究(樋野)

第6回 相反するものの同居~楕円形のこころ~(樋野)

第7回 映画「がんと生きる」~言葉の処方箋~(樋野・髙野)

第8回 まとめ 医療の隙間を埋める~寄り添うとは~(樋野)

 

とある。  筆者は、1コマは、スライドを示しながら講義し、2コマは『がん哲学』{(2004年3刷(to be出版)、2007年2刷(改訂版)、2009年(新訂版;立花隆 氏と対話)、2011年(EDITEX)}の『第1章:がん細胞の世界から人間社会を語る』から

 

「がん哲学」の気概

「天寿がん」の時代に向けて

ミクロの世界の知恵

ゲノム時代の到来

クローン時代を迎えて

倫理とは慣れ?

がん化を左右する境遇

大成するがんの芽は千分の一

がんの発症部位と生活スタイル

睡眠中の遺伝子、活動中の遺伝子

がんの告知

 

の箇所を 音読しながら進めた。  真摯な質問が多数あり、大いに感動した。  『がん哲学』の発行は、17年前であるのに、「修正箇所 無し」である。  「日進月歩の分野」であるのに驚きである。  これこそ、『先人の志を継承する』ことの「普遍的な学びの訓練」ではなかろうか!

第145回「心に咲く花会」 「真摯な 謙虚溢れる 姿」 〜 「度量を大きく、心を正し、品性のある風貌」 〜

2021年5月22日『樋野興夫講演会と田島玲子リサイタル 〜新渡戸稲造セミナーハウス開設キックオフ記念〜』(「若き音楽家を育てる会」上田幸伺 氏主催; 早稲田奉仕園スコットホールに於いて)に赴いた(添付)。  筆者は、第一部で、講演『今、ふたたび新渡戸稲造!』の機会が与えれた。  『「医師の2つの使命」1)「学問的、科学的な責任」で病気を診断・治療する ー> 学者的な面  2)「人間的な責任」で、手をさしのべる ー>  患者と温かい人間としての関係』と『ゲーテー ー> カーライル ー> 新渡戸稲造』の精神:「度量を大きく、心を正し、品性のある風貌」をさりげなく語った。

 

新渡戸稲造が、愛読したカーライルの『サーター・リサータス:衣装哲学』の『“Do thy Duty, which lies nearest thee, which thou knowest to be a Duty”(汝の義務を尽くせ。  汝の最も近くにある義務を尽くせ、汝が義務と知られるものを尽くせ)』の言葉の復習の時となった。

 

第二部は、リサイタル「音楽は心の処方箋」(歌:田島玲子 氏  ピアノ:鈴木理恵子 氏)であった。  「ほっとけ 気にするな!」(作詞/樋野興夫  作曲/鈴木穂波  編曲/鈴木理恵子)も高らかに披露された。  大いに感激した。  チラシには、{5月27日 22:00〜23:00 FM世田谷『おしゃべりマルシエ』で 樋野先生と田島玲子さんの対談があります。  是非、FMラジオの周波数を83.4MHZに合わせてお聴きください。  8月14日世田谷区 成城ホールにて、樋野先生の「講演」と田島玲子さんの「音楽の処方箋」のリライタル(9:30〜11:30)が 決定いたしました。}と紹介されていた。  「新渡戸稲造セミナーハウス」は、時代的要請であろう!  「冗談を本気でする胆力」には、ただただ感服である。  思えば、筆者は、『われ21世紀の新渡戸とならん』(2003年 イーグレープ発行)の最終章の『「今世紀の温泉と健康戦略 〜「ひも亭主」目覚めよ 〜』に、『「新渡戸セミナーハウス」を造れ!』と 記述している。  これは、私が、『全国女将サミイト2003年東京 〜 旅館業変革のとき、挑戦のとき 〜 change, chance, challenge 〜 日本文化』で講演した時に 述べたものである!  約20年が過ぎて、いよいよ 『新渡戸稲造セミナーハウス』設立の夢の現実化の時代的到来である。  不思議な時の流れである。  まさに、新渡戸稲造の「Union is Power」(協調・協力こそが力なり)の時代的タイミングであろう!

 

その後、「新井正美 先生 順天堂大学 臨床遺伝学 教授就任記念WEB講演会」(ハイブリット開催)(順天堂大学に於いて)に向かった。  新井正美 先生の「真摯な 謙虚溢れる 姿」と 記念講演『遺伝性腫瘍と私 〜これまでの自分とこれからの組織づくり〜』には、大いに感動した。  筆者は、「挨拶」の機会が与えれた。  早速、司会の齊藤光江 先生(乳腺・内分泌外科 教授)から「本日は、駆けつけて下さり、また樋野節をお聞かせ下さり、誠にありがとうございました。新井先生も大変お喜びでした。」との心温まるメールを頂いた。  格調高い、品性のある 忘れ得ぬ 教授就任記念会であった。

 

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第144回「心に咲く花会」「すべてを始動される原動力」 〜 「汝の義務を尽くせ」 〜

第144回「心に咲く花会」

「すべてを始動される原動力」 〜 「汝の義務を尽くせ」 〜

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東京女子大学の理事長と恵泉女学園の理事長との面談の機会が与えられた。  両校は新渡戸稲造(1862-1933)との縁があり、筆者は、さりげなく、両校の理事を務めている。  来年(2022年)は 新渡戸稲造生誕160周年記念である。  『「東京女子大学(1918年創立)& 恵泉女学園(1929年創立)」合同シンポジウム 〜 今、再び、女子教育 〜 』が企画される予感がする。  実現したら歴史的快挙であろう!  新渡戸稲造は幕末、盛岡に生まれている。  札幌農学校に学び、卒業後は東大に入学するが、この面接試験で将来の希望について「我太平洋の架け橋とならん」と答えたという逸話を残している。  しかし新渡戸稲造は 東大の学問レベルに満足せず、アメリカに留学する。  帰国後、母校である札幌農学校の教授に就任、教育と研究に勤め、また北海道開発の諸問題の指導にあたるが、体調を崩してカリフォルニアに転地療養をすることになる。  このカリフォルニアでの療養中に書き上げ、刊行したのが、『武士道』である。  また学問・教育の世界では、東大教授と第一高等学校校長の兼任、東京女子大学学長などを歴任した。  そして第一次世界大戦後、国際連盟設立に際して、初代事務次長に選任され、世界平和、国際協調のために力を尽くしている。  国際連盟事務次長時代の新渡戸稲造が設立した知的協力委員会である。  世界の幸福を願い、世界中の叡智を集めて設立した知的協力委員会には哲学者のベルグソンや物理学者のアインシュタインキュリー夫人らが委員として参加、第一次世界大戦後に困窮が著しかった各国の生活水準の調査や知的財産に関する国際条約案を検討し、各国の利害調整にあった。  この知的協力委員会の後身がユネスコである。  新渡戸稲造が、愛読したカーライルの『サーター・リサータス:衣装哲学』の『“Do thy Duty, which lies nearest thee, which thou knowest to be a Duty”(汝の義務を尽くせ。  汝の最も近くにある義務を尽くせ、汝が義務と知られるものを尽くせ)』の言葉の復学である。

2021年5月16日は、「東久留米がん哲学外来・カフェ」に赴いた。  東久留米市の広い会場で、人数を制限し開催された。  個人面談もり、大変、貴重な、有意義な時でした。  早速、「今日も素晴らしい時間をありがとうございました。  また今日は面談までしていただき 本当に感謝しております。  話をいっぱい聞いていただき 心が落ち着きました。  先生の言葉を胸に、これからも頑張って行きたい思っております。」との励ましのメールを頂いた。  その後、同じ会場、読書会であった。 「新渡戸稲造『武士道』(岩波文庫矢内原忠雄訳)と内村鑑三『代表的日本人』 (岩波文庫、鈴木範久訳)を交互に読み進めております。 ―― 樋野先生のユニークで わかりやすい解説と さり気なく語られるメッセージに励まされ、人生の生きる意味を あらためて考えるひとときになります。」とチラシには紹介されている。  今回は、内村鑑三『代表的日本人』の「西郷隆盛」の3章「維新革命における役割」の箇所でった。  「すべてを始動される原動力」の学びの時であった。  内村鑑三(1861−1930)は、札幌農学校新渡戸稲造と同級生であり、学んだ水産学を生かすべく国に奉職したのち、アメリカに留学し、帰国後、いくつかの学校で教鞭をとるが、いわゆる「不敬事件」が社会問題化し、一方、自身も病を得、教壇から去ることになる。  しかし不遇をかこつ何年かの間に数多くの著作、論説を発表し、これらは教育や文学、芸術などを幅広い分野に影響を及ぼした。  ちなみにこの時期に書かれた『Representative Men of Japan』(『代表的日本人』)は、新渡戸稲造の『武士道』とならぶ、世界のベストセラーになった。  「コロナ時代」求められている人物像は、「内村鑑三」、「新渡戸稲造」では、なかろうか!

第143回「心に咲く花会」「人間学」は世界共通である 〜 「国際的地位を高むる途」 〜

第143回「心に咲く花会」

人間学」は世界共通である 〜 「国際的地位を高むる途」〜

2021年5月6日 ルーテル学院大学での『現代生命科学』授業に赴いた。  今回は、教科書『カラーで学べる 病理学』の『病理学の領域』&『細胞・組織とその障害』の箇所を音読しながら、多数の質問を受けながら進めた。  大変、充実した時であった。  「教育」の5ヶ条、(1)幅の広さ(2)弾力性に富む(3)洞察と識見のひらめき(4)示唆的な学風(5)「人間力のあるケア」の実践であろう。  また、筆者が若き日に 読書を通して学んだ『新渡戸稲造の言葉』(下記)が、「現代生命科学」にも生きる「理念」であることを痛感した。

『人生は百貨店のようなものだ』

『人間活動の目的は世界の開拓にある』

『つらいことがあっても顔には出すな』

『状況の悪いときこそ明るい面を見よ』

何故か、筆者の「ロンドンの旅」(2014年)(添付)の文章が鮮明に思い出された。  

「がん哲学カフェ in UK & 緩和ケアの祖を訪ねる旅」(毎日新聞夕刊 2014324日付け「がん哲学外来」海を越えて)を行った。  324日は、緩和ケアの発祥であるSt. Joseph’s hospiceの見学・セミナーに出席した。  特に「First Contact Team」、「Volunteering」のコンセプト&内容には、大いなる感動を覚えた。  「患者視点のチーム医療」の在り方の学びであり、日本国の遅れも痛感した。誇りを持って、役割を遂行されている、数百人の多数のボランテイアの生き生きとした風貌には、人間の使命をも感じた。  325日は、Charing Cross Hospitalの敷地内にあるMaggie’s Centreを訪問した。Centre Headのお話を伺い、存在の目的と意義を学んだ。  自由に、ふらーと立ち寄れる相談の場があることは、患者・家族にとって、大いに慰めされることであろう。  326日は、現代ホスピスの祖と言われるCicely Saundersが始めたSt.Christopher’s hospiceの見学・セミナーに出席した。  特に「Nursing」、「Social Work & Bereavement〈死別〉」について教育の大切さを学んだ。  ロンドン大学では、まず、Death Caféの提唱者のお話を聴き、その後、6〜7名の小テーブルに別れて対話し、休憩を挟み、私は、講演『「がん哲学~われ21世紀の新渡戸稲造とならん〜」(「Cancer Philosophy I want to become the Nitobe Inazo (18621933) of the 21 century〜」)』の機会が与えられた。  会場一杯で、在英日本人、英国人も、全くと言ってよいほど、ご存じない「がん哲学&新渡戸稲造」の話を熱心に、聴いて下さった。  「がん哲学&新渡戸稲造」は、現代の世界情勢と、混迷感のある時代において、日本国の存在を語るのに、極めて良いテーマであると、実感する時となった。  「人間学」は世界共通である。  「チアフルな顔付を以て人に接し、見ず知らずの人に対しても、ーー、それがーー日本の国際的地位を高むる途である、」(『余の尊敬する人物:矢内原忠雄 著(岩波新書)』「新渡戸博士」より)。

まさに、人生は、想い出づくりである。

第142回「心に咲く花会」Genotype, Phenotype, Dramatype 〜『自らの強みを基盤にする』 〜

第142回「心に咲く花会」

Genotype, Phenotype, Dramatype 〜『自らの強みを基盤にする』 〜

2021年4月29日(「昭和の日」の祝日)ルーテル学院での『現代生命科学』の2コマの講義(14:30-16:10、16:20-18:00)に赴いた。 今回は、初回の授業であったので『がん病理学』の総論的な講義をした。 [『がん病理学』 は「がん」に関しての学問で、 『形態』 、 『起源』、 『進展』などを追求する学問分野である。 当然がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。 がん病理学者が『がん』 をどの様に考えるかは、とても大切なことである。 なぜなら『がん』に対する概念が世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも時には決定するからである。「がん」の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では人生の意義と目的の『静思』 へとも導くものと考える。これこそ、『がん病理学者の社会貢献』 である]と語った。

「発がんの連盟的首位性 〜 Genotype, Phenotype, Dramatype 〜」については、『「適時診断と的確治療」:初期条件がある範囲にあると、初期の変異が経時的変化とともに 分子の相互作用によって、様々に拡大し、将来予測が不可能になる。  これは初期のわずかの変異で大きな効果が出ることを意味する。非平衡状態にあり外部と相互作用する開かれた複雑系では、初期状態(Genotype)が同じでも、外部から、意識的に適時に介入すれば、ある特異点(Phenotype)で分岐し 多様性のある制御(Dramatype)が可能になるはずである。 病気はDramatypeなる故に、予防、治療が成立する。』と説明した。

筆者の「癌学事始」は、人生邂逅の3大法則 ~良き先生(重心)、良き友(外心)、良き読書(内心)~ と下記を紹介した。

  • 山極勝三郎(1863-1930)

段階ごとに辛抱強く 丁寧に仕上げていく 最後に立派に完成する

  • 吉田富三(1903-1973)

自分のオリジナルで流行をつくれ ~ 顕微鏡を考える道具に使った最初の思想家 〜

顕微鏡でみた癌細胞の映像に裏打ちされた「哲学」

 「がん細胞で起こることは人間社会でも起こる」=がん哲学

3. Alfred G. Knudson(1922-2016)

「競争的環境の中で個性に輝く5箇条」

(1)『複雑な問題を焦点を絞り単純化する』

(2)『自らの強みを基盤にする』

(3)『無くてならないものは多くない』

(4)『無くてよいものに縛られるな』

(5)『Red herring(相手をその気にさせて間違った方向に行かせる)に気をつけよ』

授業の達成目標は、

1)『世界の動向を見極めつつ歴史を通して今を見ていく』

2)『俯瞰的に「人間」を理解し「理念を持って現実に向かい、現実の中に理念」を問う人材の育成』

3)『複眼の思考を持ち、視野狭窄にならず、教養を深め、時代を読む「具眼の士」の種蒔き』

教育の目的は、1)「真の知識」、2)「あらゆる識別力」、3)「真にすぐれたものを見分ける」の実践であろう!(添付)

第141回「心に咲く花会」 「現在を的確に認識し、未来を志向する」〜 「意志の共鳴」 〜

第141回「心に咲く花会」
「現在を的確に認識し、未来を志向する」〜 「意志の共鳴」 〜

第110回日本病理学会総会(2021年4月22日〜24日、新宿の京王プラザホテルに於いて)に出席した。 今年は、北川昌伸 大会長(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 包括病理学分野 教授)のもと、テーマは、『病理学の挑戦 ― 伝統的学問からインテリジェントパソロジーまで』であった。 大いに勉強になった。「病理学者は生涯書生」・「病理学者は社会の優越者ではない」・「病理学者は自己犠牲が伴う」は、まさに、「病理学者の3ヶ条」であろう。「本質的な人間教育の見直し」は、病理学者の時代的役割であろう! 「現在を的確に認識し、未来を志向する=病理学」を極めること

は、「森を見て木の皮まで見る」ことである、マクロからミクロまでの手順を踏んだ「丁寧な大局観」を獲得する「厳粛な訓練」の場でもある。まさに、日本病理学会総会は、「意志の共鳴」の集いである。

筆者は、2010年 今回と同じ会場で、大会長として第99回日本病理学会総会を開催した。 当時の文章に『「第99回日本病理学会総会(2010年4月27日〜29日)(東京・新宿の京王プラザホテル京王プラザホテル)「広々とした病理学-深くて簡明、重くて軽妙、情熱的で冷静-」が無事終わった。 過去最高の参加人数であったとのことである。 驚きである。『病理の100年を振り返って』(菅野晴夫 先生) の特別企画(添付)、特別講演「科学の一般性、物語の一般性『2.5人称の視点』が拓くものー」(柳田邦男 氏)は、ともに1000人会場が一杯であった。 多くの病理学者に大いなる感銘を与えた。 主催者として感無量であり、涙なくしては語れない! 市民公開シンポ(4月29日)「がん医療-時代は何を求めているか?」(添付)も参加者が大幅に上まわり700人会場を1000人会場に変更した。 霞富士雄 先生『乳がん手術はどんどん小さくなっている』、有井滋樹 先生『肝がんにならない、負けない方法』、立花隆 氏『がんと私』の講演で会場の熱気が、ひしひしと伝わって来た。 パネルデスカッションも素晴らしかった。 筆者は「臨床医と患者・市民」との「懸け橋」として『がん哲学&がん哲学外来』を語った。 現代は、如何なる領域・分野においても、「陣営の外」に出て、境界に立ち、隙間を埋める「懸け橋」が求められているのではなかろうか? 本当の「隙間」は「人間の幅」であり、人間の勇気ある一歩によって、渡れるものと感ずる今日、この頃である。「広々とした病理学」は「悠々と謙虚」を生み「対立的な違いを対称化」し「未来への懸け橋」となることであろう。」とある。 また、『医学界新聞』では、『第99回日本病理学会が4月27-29日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて樋野興夫会長(順大)のもと開催された。 わが国病理学の1世紀の集大成として,「温故創新」と「未来への懸け橋」となる学術集会をめざした今学会では,1200題を超える演題が並んだ。本紙では,肝細胞癌研究の歴史的背景から最近の進歩までを6人の演者が報告した,シンポジウム「肝細胞癌の基礎的研究と病理診断 ― 歴史と最近の進歩」(座長=慶大・坂元享宇氏,帝京大・福里利夫氏)のもようを紹介する。』の記事が掲載されていた。 忘れ得ぬ懐かしい貴重な想い出である。