「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第203回「心に咲く花会」 ほんものの教え 〜 懐が深い 〜

2022年6月29日 筆者は、3代目代表を務めるZoom南原繁研究会(第215回)(18:00~21:00)に出席した。『南原繁における学問と政治』(横濱大氣堂)の発行(添付)、自由発表については、『香川県立三本松高等学校における、南原繁生誕120年記念の展示・動画・その他資料をご紹介くださいました、原彪 会員(同校前校長)及び、ご挨拶くださいました同校、泉谷俊郎校長に、感謝申し上げます。』との事務局長のお礼の言葉が送られてきた。いつか、また、三本松を再訪したいものである。

 

読書会は、『回想の南原繁』(岩波書店)であった(添付)。【南原繁没後一年,『南原繁著作集』月報の40篇に,新たな追悼・追想を加え刊行された全123篇の回想集.ゆかりのある100余名が,それぞれの経験に深く刻まれた「人間・南原繁」像を描き出す.学者・教育者としての業績や風貌ばかりでなく,戦後復興への尽力,キリスト教信仰,歌人としての側面等,南原の大きな足跡を辿り得る1冊】と謳われている。 日々勉強である。

 

2022年6月30日は、 ルーテル学院大学での『総合人間学』(10:20〜12:00)、『現代生命科学I』(14:30〜16:10、16:20〜18:00)に赴いた。 午前中のZoom授業『総合人間学』は教科書 『楕円形のこころ』(春秋社)を用いて行った。 【「楕円形の精神で生きる」:楕円形は懐が深い、尊いいのち、ほんものの教え、人生の目的を考える、多様性の統一、肝臓から学ぶ平和論、「がん哲学を考える」:あなたの細胞、がんは賢い、がんの姿】を音読しながら進めた。 午後の対面授業『現代生命科学I』では、教科書『カラーで学べる病理学』の『免疫とアレルギー』、『感染症』、『代謝異常』の章を担当した。 コロナ時代に於いてタイムリーなテーマとなった。 いつもながら、真摯な学生の姿勢と多数の質問には、大いに感動した。


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第202回「心に咲く花会」 夢も語る 〜 普遍的な人間関係の要 〜

2022年6月22日 順天堂大学 保健医療学部 診療放射線学科で3時限目(13:10〜14:40)の授業『病理学概論』と4時限目(14:50〜16:20)の授業『がん医療科学』を担当した。 その後、筆者が、新渡戸稲造記念センター長を務める新渡戸記念中野総合病院での第524回『新渡戸グローバルCPC』(18:30〜20:00)に向かった。 順天堂
大学医学部長/神経学講座主任教授の服部信孝 先生も出席され、大変貴重の時となった。 病理学者の筆者とってはCPCは原点回帰である。

 

2022年6月23日 ルーテル学院大学での『総合人間学』(10:20〜12:00)、『現代生命科学I』(14:30〜16:10、16:20〜18:00)に赴いた。 東久留米から、ルーテル学院大学の隣にあるICU国際基督教大学)の常務理事の富岡徹郎 氏が、自家用車でルーテル学院大学に連れて行って下さった。 ただただ感謝である。 富岡徹郎 氏は、今夏、新渡戸稲造生誕160周年記念軽井沢サマーセミナーで『新渡戸稲造 博士の足跡をたどる』も企画されている(添付)。 筆者は、講演『人生邂逅 〜 普遍的な人間関係の要 〜』の機会が与えられた。

 

午前中のZoom『総合人間学』はスライドを用いて『楕円形のここる』(添付)の授業を行った。『真理は円形にあらず、楕円形である。一個の中心の周囲に描かるべきものにあらずして、二個の中心の周囲に描かるべきものである。—― 人は何事によらず 円満と称して円形を要求するが、天然は 人の要求に応ぜずして 楕円形を採るはふしぎである。—― 患難の坩堝(るつぼ)の内に燃え尽くす火に 鍛えられて初めて実得し得るものである。』(内村鑑三著)をさりげなく語った。 午後の対面『現代生命科学I』では、教科書『カラーで学べる病理学』を音読しながら進めた。箇所は『炎症』、『免疫とアレルギー』の章であった。 いつもながら、真摯な学生の姿勢と多数の質問、また、今回は、卒業後の夢も語ってくれ、大いに感動した。


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第201回「心に咲く花会」 誘惑 〜「言葉に付加と削除」〜

2022年6月16日 東中野キングス・ガーデンでの『教会と地域がつながるシリーズ第6回(協力牧師研修会)』で、講演『教会でも がん哲学外来カフェを始めよう』の機会が与えられた(添付)。 参加者は牧師であったので、筆者は、さりげなく「アダムとイブがエデンの園で、なぜ蛇の誘惑に負けたのか」、「人の齢は、120年にしよう」(創世記6章3節)語った。 下記を鮮明に想い出した。

 

「見るからに好ましく 食べるのに良いすべての木を生えさせた。 園の中央には、いのちの木、それから善悪の知識の木とを生えさせた。」(創世記2章9節)、『人に命じて仰せられた。「あなたは 園のどの木からでも思いのまま食べてよい。 しかし、善悪を知識の木からは 取って食べてはならない。 それを取って食べるその時、あなたは必ず死ぬ」(創世記1章16節、17節)、『女は蛇に言った。「私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。 しかし、園の中央にある木の実について、神は、「あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ。」仰せになりました。」(創世記3章2節、3節)。「善悪を知るようになった。 今、彼が、手を伸ばし、いのちの木からも取って食べ、永遠に生きないように。――
、人をエデンの園から追い出されたので、――」(創世記3章22節、23節)。

まさに「善悪の木 (Transformation)と生命の木 (Immortalization)」が癌細胞の特徴であり、突然変異「言葉に付加と削除」による癌化にメカニズムではなかろうか!(添付) 早速、「本日はたいへんお世話になりました。 個人的にも大きな気づきが与えられ、自らを振り返るよい機会となりました。」、「本を読むのと、また実際に講演で聴くのとは、かなりの違いがあることを実感しました。講演を心より、感謝します。 家内も、先生の本よりとても励まされています。」、『「対話」、「自分の思いでしない寄り添い」ということばに感銘を受けました。」』との心温まる励ましのメールを頂いた。 大変有意義な充実した時であった。

 

終了後、筆者は、新渡戸記念中野総合病院での倫理委員会に向かった。 貴重な会議であった。 本当に、日々勉強である。


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第200回「心に咲く花会」 手をさしのべる 〜 温かい人間としての関係 〜

この度、『心に咲く花会』が第200回を迎える。 ただただ感謝である。 2022年6月8日 順天堂大学 大学院医学研究科修士課程 (医科学コース)『がんと遺伝子』の講義『環境因子とがん』(19:45~21:15)に赴いた。 当日は、順天堂大学 保健医療学部 診療放射線学科の3時限目(13:10~14:40)の授業『病理学概論』、4時限目(14:50~16:00)の授業『がん医療科学』で、『3連チャン症候群』であった。 授業では、1880年代の「足尾鉱毒事件」、2005年の「アスベスト事件」はじめ約27の事件を示した。

 

「初期条件がある範囲にあると、初期の変異が経時的変化とともに、分子の相互作用によって、様々に拡大し、将来予測が不可能になる。 これは初期のわずかの変異で大きな効果が出ることを意味する。 非平衡状態にあり外部と相互作用する開かれた複雑系では、初期状態(Genotype)が同じでも、外部から、意識的に適時に介入すれば、ある特異点(Phenotype)で分岐し多様性のある制御(Dramatype)が可能になるはずである。病気はDramatypeなる故に、予防、治療が成立する。」と語った。

 

他国からの大学院生も多数おられ、
1)がん細胞は、他人の血管に入っても生きられるのですか?
2)人間の寿命は120歳。最も長生きする生物は何ですか?
3)発がん因子の定義とは?
などなどの質問も豊富であった。 また、最後のスライドで示した下記の
(1)「学問的、科学的な責任」で、病気を診断・治療するーー>学者的な面
(2)「人間的な責任」で、手をさしのべるーー>患者と温かい人間としての関係
について、『「医療者の2つの使命」に、大変感動を覚えました』とのコメントが授業後に寄せられた。 大いに感激した。

医療通訳」所属の学生さんも8人出席されておられ、もし、筆者の新刊を英語、中国語、韓国語に訳して頂ければ、望外の喜びである。

第199回「心に咲く花会」 打開策 ~ 「歴史は繰り返す」 ~

2022年6月4日(土) (10:30−12:00) 早稲田大学エクステンションセンター中野校(東京都中野区)での、2022年春講座『がんと生きる哲学』〜 医師との対話を通して「がん」と生きる方法を考える 〜」に赴いた。 今回は、4回目で、教科書『がん細胞から学んだ生き方』(へるす出版)を音読しながら進めた。 箇所は、「国際人と肝臓の特徴」、『真の国際人と「温故創新」』、「そういう知識の程度、そういう教養の程度」、「行き詰まる日本と世界の打開策」であった。

 

「国際人と肝臓の特徴」では、『日本肝臓論』を述べた。 筆者は、「日本国のあるべき姿」として『日本肝臓論』を展開している。 「日本国=肝臓」から具体的なイメージが獲得されよう。 人間の身体と臓器、組織、細胞の役割分担と お互いの非連続性の中の連続性、そして、傷害時における全体的な「いたわり」の理解は、世界、国家、民族、人間の在り方への 深い洞察へと誘うのであろう。 新渡戸稲造(1862-1933)は、国際連盟事務次長時代(1920-1926)に、「知的協力委員会」を構成し知的対話を行った。 そのメンバー中には、当時の最高の頭脳を代表するアインシュタインキュリー夫人もいたことは特記すべきことである。 今こそ国際貢献として、『21世紀の知的協力委員会』の再興の時でなかろうか! 『真の国際人と「温故創新」』では、今は亡き原田明夫 検事総長との出会い、新渡戸稲造の「バルト海のオーランド諸島帰属問題の解決」を語った。 まさに、現在の「ロシアとウクライナ戦争」のタイミングである。 「歴史は繰り返す」の学びである。

 

その後、『鳩ヶ谷メデイカルカフェ 1周年記念特別講演会』(鳩ヶ谷福音自由教会に於いって;添付)に向かった。『人類は、「なぜ、永遠に生きれないのか?」、「生きて120年」。何故、イブは、蛇の誘惑にまけたのか!?「アダムは930歳、ノアは950歳、アブラハムは175歳、モーセの時代から120歳」』を、いつも「冗談ぽく」、さりげなく語った。 事前に寄せられた多数の質問を、大嶋重徳 牧師がまとめられ、それに対して全力を尽くして答えた。 本当に充実した、有意義な、貴重な時であった。


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第198回「心に咲く花会」 『温かく迎い入れる』 ~ ライフワーク ~

2022年5月28日の朝、筆者が顧問を務める『21世紀のエステル会』の代表の金田佐久子 牧師から『西川口だより6月号』が送られてきた。その中に、【樋野興夫先生の著書『いい覚悟で生きる』(小学館)にもダブルメジャーの勧めがあります。〝衣食住のための職業や生活のためにだけ時間を使っていては、人生いつかむなしくなります。自分の役割と使命感に燃えるライフワークを もうひとつ持つこと、それがダブルメジャーな生き方です。……私が本業の病理学とともに がん哲学外来をやっている意義もそこにあります。……( 101頁)〞】と、記載されていた。 大いに感動した。

 

2022年5月28日午後は、『お茶の水メデイカル・カフェ in OCC(お茶の水クリスチャン・センター)』に赴いた(添付)。 4組の個人面談も行い、大変、有意義な貴重な時が与えられた。 想えば、『お茶の水メデイカル・カフェ in OCC』は、筆者が、「順天堂大学医学部 病理・腫瘍学教授」時代の 2012年5月26日(土)開設にされた。 第1回は、柏木哲夫 先生の『生きること、寄り添うこと』の記念講演会であった。 2020年12月24日に、初代の代表の榊原寛 先生が、79歳で、ご逝去され、その後、筆者は、2代目の代表を仰せつかった。 講演では、【「勝海舟の屋敷があった赤坂で、講演に呼ばれた。『勝海舟の胆力 〜 がん哲学外来の心得 〜』は時代的要請となろう。 母を亡くして 悩んでいるクララに対して、勝海舟の奥さん(たみ)の言葉;『悲しい時には 私達の所へいらっしゃい、一緒に泣きましょう、そしてあなたが 仕合せな時には 一緒に笑いましょう。 さあ勇気をお出しなさい、—— これから先の長い年月のことは考えず、今日という日以外には 日がないと思って ただ毎日をお過ごしなさい』は、『訪れる人を 温かく迎い入れる =「がん哲学外来」』の原点でもあろうと、また筆者の夢は『勝海舟新島襄内村鑑三新渡戸稲造南原繁矢内原忠雄たちとの「天国カフェ」である」】と、さりげなく語った。 まさに、『人生邂逅の3大法則 ~ 良き先生(重心)、良き友(外心)、良き読書(内心)~』の学びの時であった。 今年の9月、10周年が企画されるようである。 スタッフの皆様の「おもてなし」には、ただただ感服する。


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第197回「心に咲く花会」 異分野の交流 〜 『桃太郎』の器量 〜

2022年5月18日夜 第226回 『黎明の会』(六本木バトゥーに於いて)で講演『がん哲学と南原繁』の機会が与えられた。『「今回は新渡戸稲造や南原繫の研究者としても有名で、「がん哲学外来」の創設者である樋野興夫先生をお招きしています。」』と過分な紹介がなされていた。 大いに感激した。 大学の教授、企業の会長、社長、医師など、多種の参加者であった。 大変有意義な異分野の交流の時であった。 2022年5月19日は、東京女子大学の理事会・評議委員会に赴いた。 2022年5月20日夜は、Zoom⽅式での南原繁研究会(第214回)に出席した。 ⾃由発表、読書会『回想の南原繁』であった。 本当に日々勉強である。 2022年5月21日は、 早稲田大学エクステンションセンター中野校(東京都中野区)での、2022年春講座『がんと生きる哲学』〜 医師との対話を通して「がん」と生きる方法を考える 〜」である。 教科書は、新刊『がん細胞から学んだ生き方』(へるす出版2021年)を使用している。 今回は、第1章『医療者としての原点』の『首尾一貫する大切さ』から音読しながら進める。「大きな愛情と大きなスケールをもった人間」、「純度の高い専門性と社会的包容力」
の学習の場である。

 

【「新渡戸稲造が 雑誌の執筆や講演の依頼を受けるようになると、思慮の浅い学者は「専門以外の仕事をするとは、なにごとか」と批判しました。 そのような声に対して新渡戸稲造は「講演や雑誌の執筆で、吾輩は専門的知識は教えない。 常識を教えるのだ」と反論しました。 そして理想と確信をもって陣営の外に出ていったのです。」、まさに「見る人の 心ごころに まかせておきて 高嶺に澄める 秋の夜の月」の心境です。」、「新渡戸稲造は著書『世渡りの道』のなかで「桃太郎に器量があったからこそ、犬猿の仲の犬と猿、そして雉というまとまるはずのない三者を 最高の運命共同体にすることができた。 人は性質の異なった者を受け入れるだけの雅量を もたなければならない」と提言しています。」、「『桃太郎』の解釈は、好き嫌いで仲間や部下を集めたり排除する自称リーダーへの警告でもある。」】の復習である。