「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第255回「心に咲く花会」 『だけ』&『しかない』 〜 『洗練された人格像』 〜

2023年3月28日千葉県の『柏がん哲学外来』(柏地域医療連携センターに於いて)に赴いた(添付)。【『がんの悩みを病院の外で心おきなく話したい』―『がん哲学外来』は、がん患者、経験者、ご家族のための対話の場です。 樋野興夫先生とゆっくり語り合ってみませんか? 1組40分程度で参加費は無料です。 今回は3組の面談をお受けいたします。】と紹介されている。 今回、3組の個人面談の時が与えられた。 大変有意義な貴重の時となった。 終了後は、スッタフと昼食の時を持った。 【『人生の邂逅の3大法則 〜 良き先生、良き友、良き読書 〜』を、さりげなく語った。 また、夏目漱石(1867 - 1916)の『ほかの所は何をみても東京の足元にも及ばないが(道後)温泉だけは ―― 立派なものだ』(『坊ちゃん』)、『あれが日本一の名物だ(富士山)あれより他に ―― 自慢なものは何もない ――』(『三四郎』)から『だけ』&『しかない』(『われ21世紀の新渡戸とならん』e-grape 発行2003年)(添付)が、病理診断を行う病理医の・心得・覚悟であることも語った。『風貌を診て、心まで読む』は、病理医の基本であり、『がん哲学外来の現場・実践』においても必須でもあろう。】の話で大いに盛り上がった。

 

それから、東京都世田谷区の経堂に向かった。 恵泉女学園での送別会に出席した。 筆者は2021年7月1日、新渡戸稲造(1862-1933)から学んだ河井道(1877-1953)が、初代学園長である恵泉女学園の9代目理事長を拝命したので、今回、閉会で【河井道は自著『わたしのランターン』の終わりに『ここまで、わたしは、私のランターンをかかげてきた。時がくると、それは別の手へとひき継がれて、さらに先へと運ばれていくであろう。私たちの魂の「太陽」が、この世界の面から、うれいと闇の跡をひとひらも残さず追いはらうまで、このランターンが、芯を切りととのえられ、燃え続けていくように、わたしはそれのみを願っている』と記述している。】と語る機会が与えられた。 女子教育に 大いなる理解を示した新渡戸稲造東京女子大学 初代学長)が、河井道(恵泉女学園 創立者)、津田梅子(1864―1929; 女子英學塾 創立者)、安井てつ(1870-1945;東京女子大学 第2代学長)を 援護した三人に共通するのは『洗練された自尊心』の人格像であると考える。 まさに、『種を蒔く人になりなさい』の実践であろう。


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第254回「心に咲く花会」 グローバル 〜 相反する思いが拮抗 〜

2023年3月22日 東久留米駅―>秋津駅―>徒歩―>新秋津駅―>府中本町駅―>稲田堤駅―>徒歩―>京王稲田堤駅―>京王多摩センター駅の電車の旅であった。 電車から眺める森林の風景には心が慰められた。 到着後、パルテノン大通りを歩き 多摩市立グリーンライブセンターの満開の桜を眺め、スクールバスで恵泉女学園大学に赴いた。 その後、順天堂大学医学部に寄り、東中野キングス・ガーデンのスタッフと『第6回日本地域医療連携システム学会』の打ち合わせを行った。 そして、新渡戸記念中野総合病院での『第532回新渡戸グローバルCPC』に出席した。 準備されている脳神経内科・脳神経研究室(新渡戸脳研) のスタッフの皆様、研修医、医学生の真摯な学びの姿勢には、大いに感動した。 大きな学びの1日となった。

 

帰宅したら、山梨英和大学より『チャペルだより』(第26号2023年3月16日発行)が送られて来ていた(添付)。【樋野先生の素晴らしいご講演だと思います。 一同が、大きな感銘を受けることが出来た、貴重な学びでした。 厚く御礼申し上げます。】との心温まるメールが届いた。 また、筆者のことが記載されている『百万人の福音』(4月号)&『クリスチャン新聞』(4月号)(いのちのことば社)も送られてきた。 さらに、新刊【『ヨブ記』&『がん病理学』~人間学~】(タイトル案)の企画で大いに盛り上がった。【『大酒飲みの不良息子が『ビール』、かぐや姫が『日本酒』を、河口湖で飲みながら大喧嘩している姿。 それを、富士山の頂上から『緑茶』を飲みながら眺めているの筆者の絵が掲載されていると最高ですね!】&【『ヨブ』が病気になった時に友人が見舞いに来た! 1)『ヨブ』にどう言ったか? 2)『ヨブ』はどう反応したのか? 3)元気な時に言う言葉と、苦しんでいる時に同じ言葉を言われた時どう受け取るか? 4)何を言った時に相手が嫌になったのか? 5)健康な時には会いたい友達がいても、病気になったら ―― 6)すべてを神さまにお任せしようという敬虔な思いと 7)この苦難を到底受け入れられない、『神さま、なぜですか!』という相反する思いが拮抗していますが、そのいずれも神にゆるされていて、人は思う存分、神に食ってかかってよいというのが『ヨブ記』の重大なメッセージなのだ】 新刊【『ヨブ記』&『がん病理学』~人間学~】が本当に実現したら歴史的大事業となろう!


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第253回「心に咲く花会」 一人の人間 〜 『わが歩みし道』 〜

2023年3月18日『お茶の水メデイカル・カフェ in OCC』に赴いた。 今回は、韓国のソウル(Seoul)から夫婦&息子さんの3人と 静岡県浜松市から2人の看護師も参加されていた。 筆者は、個人面談の機会も与えられた。 韓国ソウル、静岡県浜松でも『がん哲学外来』が開設される予感がする。 今回は、ヘレン・アダムス・ケラー(Helen Adams Keller、1880-1968)についても語った。『私は一人の人間に過ぎないが、一人の人間ではある。 何もかもできるわけではないが、何かはできる。 だから、何もかもは出来なくても、出来ることを 出来ないと 拒みはしない」』(ヘレン・ケラー)が鮮明に想い出された。 大変有意義な充実した貴重な『お茶の水メデイカル・カフェ in OCC』であった。

 

2023年3月19日は、特別礼拝・講演会『がん哲学外来カフェ、その原点と意義〜 内村鑑三(1861-1930)、新渡戸稲造(1862-1933)、南原繁(1889-1974)、矢内原忠雄(1893-1961)の思想から学ぶ 〜』(インマヌエル越谷キリスト教会;埼玉県越谷市)に赴いた(添付)。【教会創立35周年記念:『がん哲学』とは南原繁(戦後初代の東大総長)の『政治哲学』と吉田富三(1903-1973;元癌研所長・東大教授・佐々木研究所長)の『がん学』をドッキングさせたものです。『がん哲学外来』とは「生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がんの発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする『陣営の外』に出る病理学者の出会いの場」です。『がん哲学外来』の目的は、医師や家族などが自由な時間をもって患者とより深く対話していくことです。世界の国々がそれぞれひとつの体の中のそれぞれの器官の役割を成すように関係し合えば、平和な社会が出来上がっていくでしょう。 マイナスxマイナス=プラス! 消極思考・マイナス思考の人同士が会話をすることでもプラスのものを生むことができるのです。『あなたの隣人を、あなた自身のように愛せよ』(ルカ10章27節)】と紹介されていた。沖縄在住の方も参加されていた。 牧師夫人が、南原繁が3期生の香川県三本松高校の卒業生(84期生)で、647ページに及ぶ本『わが歩みし道 南原繁―ふるさとに語るー』(発行:香川県立三本松高等学校同窓会)(添付)の第5章『われらの歩んだ道』(page239-269)をコピーして持参された。 大いに感動した。


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第252回「心に咲く花会」 人生を見つめるチャンス 〜 足下を照らす懐中電灯 〜

2023年3月13日 池上彰先生の近著『聖書がわかれば世界が見える』(SB新書)を拝読した。『がんばりすぎない、悲しみすぎない』(添付 2017年 講談社)での池上彰先生との対談が鮮明に思い出された。 グローバル化の現代における『真の国際人』としての教養について語り合い、真髄に触れる貴重な一時となったものである。

 

【研究が進み、がん患者の生存期間が長くなった現代において、がんは『慢性疾患』と言われており、患者は長期間にわたる通院、治療を余儀なくされています。 その負担は患者本人だけでなく、家族にも重くのしかかります。 樋野先生が主宰する「がん哲学外来カフェ」には、患者本人だけでなく、家族からの相談も後を絶たないそうです。 どうすれば、前向きな気持ちを失わずに、がんになってしまった家族と最期まで向き合うことができるのか。 これは、がん患者の家族だけでなく、今後がん患者やその家族になる可能性のある私たちみんなの重要な課題と言えるでしょう。― 樋野先生より『池上先生とはお話したいことがあります。ぜひ、対談したいですね』とお返事をいただきました。 ぜひこちらの本の特別付録として、樋野先生と『がん患者の家族 こころのあり方』をテーマに対談して頂けないでしょうか。―】と依頼された。

【はじめに:― 苦しんでいる患者を前に、『健康な自分が弱音を吐くことなどできない』と一人悩まれている家族の方は、この本を読むことで、少しは気持ちが楽になっていただけるのではないでしょうか。 また家族だけでなく、患者自身もこの本を読んで、家族の思いを知ってほしいと思っております。 八方ふさがりでも、天は開いています。 私の言葉をきっかけに、それぞれに自分の足下を照らす懐中電灯を見つけていただけたら嬉しく思います。】
第1章 受け入れる ー 宣告・治療の選択
第2章 共にたたかう ー 治療
第3章 寄り添う ー 転移・再発・緩和ケア
特別対談 池上 彰 × 樋野興夫 がんは人生を見つめるチャンス
で『がんばりすぎない、悲しみすぎない』(講談社)が構成された(添付)。


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第251回「心に咲く花会」 教育の理念 〜 多様性のある居場所 〜

2023年3月10日 『東久留米―>秋津―>新秋津―>府中本町―>稲田堤―>京王稲田堤ー>京王多摩センターからスクルーバス』で、東京都多摩市にある恵泉女学園大学・大学院の卒業式・学位授与式に赴いた。 午前中(10:00〜)は『人文学部:日本語日本文化学科・英語コミュニケーション学科・人文学研究科』であった。 全員138名であった。『学燈ゆずり』では恵泉女学園創立者:河井道(1877-1953)の『わたしのランターン』の終わりにある【わたしは、私のランターンをかかげてきた。 時がくると、それは別の手へとひき継がれて、さらに先へと運ばれていくであろう。 私たちの魂の『太陽』が、この世界の面から、うれいと闇の跡をひとひらも残さず追いはらうまで、このランターンが、芯を切りととのえられ、燃え続けていくように、わたしはそれのみを願っている】が朗読された。 筆者は、2021年7月1日、新渡戸稲造(1862-1933)から学んだ河井道が初代学園長である恵泉女学園の9代目理事長を拝命することになった。 理事長として、保護者に『恵泉女学園の教育の理念の10ヶ条』を語った。 昼食後、大学構内を散策した。

 

午後(14:00〜)は、『人間社会学部:国際社会学科・社会園芸学科・平和学研究科』の卒業式・学位授与式であった。 全員で156名であった。 答辞を述べられた卒業生代表は、筆者が代表を務める『南原繁研究会』のメンバーの鈴木英雄氏
のお孫さんであることを知った。 大いに感動した。 保護者には『多様性のある居場所の教訓の5ヶ条』をさりげなく語った。 筆者が『新渡戸稲造記念センター長』を務める新渡戸稲造賀川豊彦(1888-1960)らによって創設された新渡戸記念中野総合病院の副院長(外科部長兼務)大野玲先生にも偶然にお逢いした。 娘様の卒業式であった。 奥様、息子様も参加されており、ご家族とご一緒に記念写真を撮った。 本当に有意義な貴重な卒業式であった。 終了後、東京都杉並区の東京女子大学の理事会に向かった。 今年(2023年)は、新渡戸稲造没90周年、河井道没70周年でもある。 女子教育に大いなる理解を示した新渡戸稲造東京女子大学初代学長)が、援護した3人【河井道(恵泉女学園 創立者)、津田梅子(1864-1929;女子英學塾 創立者)安井てつ(1870-1945;東京女子大学第2代学長)】に共通するのは『種を蒔く人になりなさい』の実践であろう。

第250回「心に咲く花会」 学び続ける 〜 自分はこのときのために 〜

今日(2023年3月7日)は筆者の誕生日である。 満月の日でもある(添付)。 多数の心温まる励ましの祝辞を頂いた。 ただただ感謝である。
【『樋野先生のお誕生日といえば、2014年3月22日から28日まで「がん哲学外来メンバー」と共に行ったロンドンの旅で樋野先生の還暦をお祝いした事が思い出されます。 24日St Joseph's Hospice 25日マギーズセンター 26日St Christopher's Hospice、ロンドン大学Death Caféと記されています。 樋野先生のお働き、継続する事の意味を噛み締めて 感謝に耐えません。』、『3月7日生の著名人、国内外、多様な分野に数多いらっしゃいます。 島根県出身で、順天堂草創期に活躍された西周(1829-1897)は、森鴎外(1862-1922)、北里柴三郎(1853-1931)等に大きな影響を与えた人物ですね。』、『今朝は お誕生日に相応しい穏やかな早春の息吹を感じるお日和ですね。―― 相手の方が 時に涙してくださる時には《自分はこのときのために?》と、思える幸せを頂いております。』、『本日より《がんと生きる哲学》講座の一般受付がはじまります。』
(https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/58105/)

 

『樋野興夫先生は、明治時代の《内村鑑三(1861-1930)・新渡戸稲造(1862-1933)・岡倉天心(1863-1913)》の国際人と並ぶ先生です』、『お誕生日おめでとうございます。 羽を傷ついた鳶の恩返しの実話は、先生のご活躍の原点になっているのだと実感しました。 本日は学院の卒業式でもあります。 いみじくも《boys be ambitious》のことばを卒業生に贈りたいと思っています。』、『お会いする度に優しい笑顔に癒されます。 そして講演会等拝聴し、自分自身の未熟さを痛感し、反省。(ああ、樋野先生はどうしていつもあの優しい笑顔でいらっしゃるの?)クラーク(1826-1886)博士、内村鑑三新渡戸稲造勝海舟(1823-1899)等々から、素晴らしい種子を頂き、知性、品性をご自身の努力で研きあげ、今では立派な実を付け、私たちに種子を蒔く人になっていると思います。―― 少しでも樋野先生に近づけるように、日めくりカレンダーの言葉を胸に生活していきたいと思います。』、『いくつになっても学び続けること、物事に対して情熱をもつこと、感性を大切にすることは大切ですね。 先生から多くの刺激を受けております。』などなど 沢山の真摯な言葉には、大いに励まされた。


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第249回「心に咲く花会」 人生の鎔炉 〜 鍛えられる 〜

新刊『もしも突然、がんを告知されたとしたら。』(東洋経済新報社)が今春、発行されるとのことである。 大いに期待される。 最近、『ヨブ記』と内村鑑三(1861-1930)の『ヨブ記講演』を再読する機会が与えれた。
【人は何故に艱難に会するか、殊に義者が何故艱難に会するか、これヨブ記の提出する問題である。 これ実に人生最大問題の一である。 そしてこの問題の提出方法が普通のそれと全く異りおるがこの書の特徴である。--- 実に彼は生涯の実験——殊に悲痛なる実験 ---- を以て問題を提出せられたのである。 教場における口または筆に依る問題の提出及び解答ではない。---- 実に彼は実験を以て大問題を提出せられ、実験を以てこれに答えしめられたのである。―― 火と燃ゆる人生の鎔炉に、鉄は鍛えられんとするのである。文学上の遊戯ではない。 生ける人間生活の血と火である。これヨブ記の特徴である。――】とある。また、【しかし解答は与えられずして与えられたのである。 ―― それで疑問は悉く融け去りて 歓喜の中に心を浸すに至るのである。 その時苦難の臨みし理由を尋ねる要はない。 否苦難そのものすら忘れ去らるるのである。 そしてただ不思議なる歓喜の中に、すべてが光を以て輝くを見るのみである。】と記述されている。大変タイムリーな組み合ではなかろうか!

 

さらに、新刊【『ヨブ記』&『がん病理学』~人間学~】(いのちのことば社)が企画されている。 共に実現したら歴史的大事業となろう!『吉田富三』(1903-1973)没後50年・生誕120年でもある。【電子計算機時代だ、宇宙時代だといってみても、人間の身体のできと、その心情の動きとは、昔も今も変わってはいないのである。 超近代的で合理的といわれる人でも、病気になって自分の死を考えさせられる時になると、太古の人間にかえる。 その医師に訴え、医師を見つめる目つきは、超近代的でも合理的でもなくなる。 静かで、淋しく、哀れな、昔ながらの一個の人間にかえるのである。】(吉田富三)。 母校の鵜鷺小学校の卒業式で、来賓が言った言葉「ボーイズ・ビー・アンビシャス」(boys be ambitious)のウィリアム・クラーク(1826-1886)精神が内村鑑三新渡戸稲造(1862-1933)、さらに南原繁(1889-1974)、矢内原忠雄(1893-1961)と繋がった。 まさに、不思議な『人生の鎔炉』である。