「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第210回「心に咲く花会」 義務を尽くせ 〜 潔く専念する 〜

今週、若き日に学んだ【地球規模で考え、地域で行動する(Think globally, Act locally.)】の言葉が鮮明に思い出された。 新渡戸稲造(1862-1933)が、国際連盟事務次長時代(1920-1926)に設立したのが、知的協力委員会(1922年設立)である。 今年(2022年)は、設立100周年である。 【世界の幸福を願い、世界中の叡智を集めて設立した知的協力委員会には、哲学者のベルグソン(Henri-Louis Bergson、1859-1941)や 物理学者のアインシュタイン(Albert Einstein、1879-1955)、キュリー夫人(Madame Curie、1867-1934)らが委員として参加、第一次世界大戦後に困窮が著しかった各国の生活水準の調査や知的財産に関する国際条約案を検討し、各国の利害調整)にあった。 この知的協力委員会の後身がユネスコである。 新渡戸稲造が、愛読したカーライル(Thomas Carlyle, 1795-1881)の『サーター・リサータス:衣装哲学』の【“Do thy Duty, which lies nearest thee, which thou knowest to be a Duty”(汝の義務を尽くせ。汝の最も近くにある義務を尽くせ、汝が義務と知られるものを尽くせ)】の言葉の復習の日々でもある。

 

今年(2022年)は、【環境問題のバイブル】と言われる、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソン(Rachel Carson 1907-1964)の『沈黙の春(Silent Spring)』(1962年)が出版されて60周年となる。 日本語訳は、戦後初代東大総長であった南原繁(1889-1974)のご長男:今は亡き南原実(1930-2013)氏によって出版されている(青樹梁一というペンネームの為に知る人ぞ知る)。 筆者は、南原繁没30周年記念事業でスタートした【南原繁研究会】(2004年) 以来、南原実 氏とは毎年、wifeと一緒にお逢いして、夕食をしながら、親しい深い学びの時が与えられたものである。 まさに、私にとっては『未来に生きる君たちに』(南原実)の貴重な得難い「人生の特別ゼミナール」の時間であった。【病理学者】の筆者にとっては、【「森を見て木の皮まで」診る者であり、マクロからミクロまでの手順を踏んだ「丁寧な大局観」を獲得する「厳粛な訓練」、「自分の人生に潔く専念する」とは、何かを、深く静思する】実践の場でもあった。 「人生の忘れ得ぬ良き想い出」である。