「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第277回「心に咲く花会」 自由にして勇気ある行動 〜 普遍性の烙印を押す 〜

筆者は、新渡戸稲造(1862-1933)から学んだ河井道(1877-1953)が、初代学園長である恵泉女学園の9代目理事長を拝命することになり、2023年7月10日は、 Zoom 学園学校会議に出席した。 新渡戸稲造の『優雅な感情を養うは、他人の苦痛に対する思いやりを生む。しかして他人の感情を尊敬することから生ずる謙遜・慇懃(いんぎん)の心は礼の根本をなす』が鮮明に蘇って来た。『女子教育』の原点回帰の時となった。

その後、Zoom第228回南原繁研究会での自由研究『新渡戸稲造の学び 〜 真の国際人 〜』の機会が与えれた。 2004年にスタートした南原繁研究会 【初代代表、鴨下重彦 先生(1934年-2011年、東京大学名誉教授、国立国際医療センター名誉総長)、第2代代表、加藤 節 先生(成蹊大学名誉教授)】の3代目の代表を、2019年 南原繁(1889-1974)生誕130周年を祝し、仰せつかった。 南原繁は、内村鑑三(1861-1930)と新渡戸稲造から大きな影響を受けた。 新渡戸稲造が、校長時代の一高で学び、東大法学部に入学後、内村鑑三の聖書講義に出席するようになった。 東大卒業後、内務官僚から学者に転進し、ヨーロッパ留学を経て東大教授となり、戦後、東大総長に就任した。

南原繁が東大総長時代の法学部と医学部の学生であった二人の恩師から、南原繁の風貌、人となりをうかがったものである。 【南原繁は、『高度な専門知識と幅広い教養』を兼ね備え『視野狭窄にならず、複眼の思考を持ち、教養を深め、時代を読む
具眼の士』】と教わった。【『時代を動かすリーダーの清々しい胆力』としての『人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動』(南原繁著の「新渡戸稲造先生」より)】が思い出される今日この頃である。

英文で書かれた『武士道』(新渡戸稲造)と『代表的日本人』(内村鑑三)は、筆者の若き日からの座右の書で、2007年から読書会を始めた。 悩める時に、いかに勇気づけ、励まされたことか。 我々は、歴史に学ばなければならない。『いかに生きるべきかの基軸』を求める時代の到来を予感する。 『自由にして勇気ある行動 〜 あらゆる行動に普遍性の烙印を押す 〜』の復学の日々である。