「心に咲く花会」樋野興夫コラム

一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫(順天堂大学 名誉教授)コラムです

第281回「心に咲く花会」 判断の分かれ道 〜 『本人の自由意志』 〜

2023年8月5日 早稲田大学での講座の後、オンラインセミナー(いのちのことば社に於いて)に赴く(添付)。

人間の体の中には相対するものが共存している。 『がん遺伝子 と がん抑制遺伝子』、『交感神経 と 副交感神経』など。 その姿は同心円ではなく、二つの中心を持つ楕円形である。 内村鑑三(1861-1930)と新渡戸稲造(1862-1933)の『楕円形の精神』がここにあろう!。 良いことも悪いことも包み込んで バランスよく生きるのが、まさに、『人生の目的は品性の完成』であろう!

小学生の授業で筆者の夢を聞かれ、「7人の侍と一緒に天国で『がん哲学外来・カフェ』を開催すること」と冗談を本気で語る。7人には、内村鑑三新渡戸稲造の他に勝海舟(1823-1899)、新島襄(1843-1890)も居いる。

『がん哲学外来』は、『暇げな風貌』と『偉大なるお節介』がモットーである。脇を甘くして付け入る隙を与えなければ、患者の心は開きません。 懐の深さを示してその場で感動を与える。 人生から期待される役割や使命に 気付いてもらう。 先人の言葉もさりげなく使う。 それが『言葉の処方箋』である。 まさに、『初めに、ことばがあった』(ヨハネ福音書 1章1節)である。

『人には 最後に死ぬという 大事な仕事が残っている』。 哲学者カント(1724 -1804)の臨終の言葉『これでよい』。 勝海舟は『これでおしまい』。内村鑑三の難病で亡くなった娘は『もう行きます』。 人間、最期はこの三つのどれか準備しておいた方が良いであろう。 これが『クオリティー・オブ・デス(死の質)』である!

『病気であっても病人ではない』&『誰にでも起こる病気はその人の個性の一つである』&『雨が降ったときに傘をさすか、レインコートを着るか、家に入ってしのぐか。 その選択は患者の自由意志』&『人間は いつも判断の分かれ道に 立っている』 その答えを選ぶのは『本人の自由意志』であろう!